「学校給食は親の力では変えられない」―福島原発事故による食品への放射能汚染は給食を直撃した。我が子を体内被曝させたくない親たちの悩みは深刻だ。父母らがきょう、国会内で対政府交渉を持った。(主催:オール日本・給食の安心安全を願う父母の会)
政府からは文科省、厚労省、消費者庁、復興庁の中堅若手官僚が出席した。
福島県郡山市の母親の最大の悩みは学校給食に福島産の牛乳が使われていることだ。「地産地消はやめてほしいと申し入れても地産地消は繰り返される」と訴えた。「薄められているから(検出される放射能の)数値が低いのではないか。不信ばかりが募る」と続けた。
文科省スポーツ・青年局学校健康教育課 学校給食係長は次のように答えた。「食品の安全は厚労省が決めた基準にもとづいて出荷制限をかけている。基準値を超えるものは出ていない」。
お役所答弁と言ってしまえばそれまでだが、子を持つ親への配慮は ひとかけら もない。何より子供の健康を考慮していない。
学校給食の安全基準値は、一般の食品の基準が適用される。制度のおかしさが根底にある。「子ども基準値を設けて」と願う父母たちの声は政府に聞き入れられない。
被曝の実態調査を続けている中学校教師の川根眞也さんが、役所の杓子定規に反論した―
「発育期の子供たちの体内に放射能が入る。大腸、小腸を傷つけるんですよ…(中略)あなた方はICRPの基準に従って言ってるだけだ。ICRPは生身の体に対する考慮はみじんもない。ロボットと同じように見ている」
国産シイタケの給食への使用も深刻だ。昨年12月、文科省から一篇の通達が出た。「国産シイタケの使用自粛は風評被害につながるので自粛したりしないよう」とするものだ。役所独特のまわりくどい言い方だが、「国産シイタケを給食でしっかり使うように」ということである。
文科省は通達の存在は認めたが、誰からの要請なのかは最後まで明らかにしなかった。
会津の母親は子どもが給食のシイタケを食べて体調が悪くなった例を次々とあげた。「鼻血が出た」「じんましんが出た」……彼女は「子供を守りたいのか、被曝させたいのか(役人)一人ひとりに聞いてみたい」と食い下がった。
政府が給食の安全に配慮してくれない以上、子供に残された自衛手段は弁当しかない。ところが弁当を持っていくとイジメに遭う。校長先生からは叱られる。
母親たちは政府側に「こうした事実を文科省は把握しているのか?」と尋ねた。
「初めてうかがったような話が大半」と文科省はトボケた。本当に知らなかったとすれば業務怠慢だ。きょうの交渉では政府からは何ひとつ明確な答弁は得られなかった。
大甘の食品安全基準自体が噴飯ものである。大人でさえ危ない食品を子供に食べさせているのが日本国政府だ。
「お母さんたちは限界にきていますよ」。まとめ役の女性は話した。