東京都知事選挙は三つ巴となるのだろうか。巷間ささやかれていた宇都宮けんじ前日弁連会長と細川護煕元首相の「脱原発候補一本化」は、現時点では困難なもよう。関係者による大詰めの調整が今も続いており予断を許さない。
脱原発を唱え立候補の意志を固めていた細川元首相は、正午から都内のホテルで、原発ゼロで考えを同じくする小泉純一郎元首相と会談し最終調整した。1時間後に2人の元首相は「ぶら下がり会見」に応じた。
細川氏は「原発問題は国の存亡がかかっているという危機感がある。国の問題でも知事として非常にやりがいがあると思う」と、現政権の原発問題に対する危機感から出馬を決めたことを明らかにした。
小泉氏は「原発なしでも日本は発展できる。原発なしでやっていけるとするグループと、原発なくして発展無しというグループの争いだ。東京が原発なしでやっていければ必ず国政に影響を与える」と、総理経験者が都知事になることの意義を強調した。
細川氏の選挙にどう関与するかと問われると、「喜んで積極的に関わる」とし、演説会など前面に出ることを明らかにした。
細川氏は無所属で立候補する。
脱原発を掲げていち早く都知事選への立候補を表明していた宇都宮氏は、細川氏に対して公開討論を呼びかけた。脱原発陣営同士の潰し合いを危惧する向きが、一本化を求め水面下で動いていたためだ。
ぶら下がり会見を終えて車に乗り込もうとする細川氏に筆者は「宇都宮さんが公開討論を呼びかけているが…」と質問した。細川氏は振り向き筆者と視線を絡ませた。無言だったが、公開討論は気にかかっているようだった。
細川氏の立候補表明を受ける形で宇都宮氏が午後4時から、四谷の選挙事務所で記者会見した。 “一本化は困難 ”とする内容の記者会見だ。
宇都宮氏は「原発以外に福祉、雇用、街づくりなどの政策で私と細川さんとでは違いがある」と説明した。脱原発をめぐっても「細川さんは首相だった時、原発推進だった」と違いを強調した。
宇都宮氏は、政策ですり合せができても一本化は困難であるとの姿勢を変えなかった。
辺野古の埋め立てが争点となっている名護市長選挙などが示すように反対派は一枚岩になってこそ優位に立てる。分裂すれば推進派に漁夫の利をさらわれるだけだ。
「宇都宮さんが知事で細川さんが副知事という方法もあるが、それでも一本化できないか?」。荒唐無稽なアイデアだが筆者は提案した。
宇都宮氏は「脱原発の声はまだまだ小さい。できるだけ多くの候補者が立った方が脱原発の声を大きくできる」として、一本化は無理な注文であることを重ねて強調した。
記者会見の後、筆者は確認のため宇都宮氏に「一本化の可能性はゼロということか?」と尋ねた。
「小泉政権で格差と貧困が拡大した。その小泉さんが支援に回る細川さんとどうして一緒にできますか?」貧困問題に一貫して取り組んできた氏の人柄がにじみ出るような答えだった。
宇都宮氏は共産、社民の推薦を受け無所属で出馬する。
舛添要一・元厚労相は午後2時30分から都庁で記者会見した。舛添氏は無所属だが、自民党と公明党の支持を受ける。舛添氏は「2020年のオリンピックを何としてでも成功させたい」と切り出した。
原発政策について聞かれると、「東京は日本で一番電力を使う。私は脱原発と常に言い続けている。東京で再生エネルギーの比率を増やすべきだ」と脱原発をアピールした。
しかし、具体的な目標は示さず、「専門家の意見を聞く。そのために独立した委員会を作った」と言及するに留めた。
舛添氏は自身の姉が生活保護を受給していた際に、市役所からの扶養依頼があったのを断ったとされる。筆者がそのことを質問すると、「どの家族にも事情がある」と回答し、例え話を展開した。
生活保護法の改正(改悪)により扶養の義務が強化され、年収あたりの扶養目安を提示する自治体さえある。その一方で、舛添氏は自らの問題を明確にしなかった。
舛添氏は「役所の水際作戦はいけない。不正受給もだめ」と言い、「生活保護申請は憲法に記載された権利だ」として条件を満たせば受給できるとした。
「では舛添さんが当選したら東京都では水際作戦を行わないか?」筆者は食い下がったが、明確な答えは得られなかった。