【ガザ発】 イスラエル利する西側メディア報道

退避する家族。母親はイスラエルの爆撃に憤っていた。=18日、ベイト・ラフィーヤ

退避する家族。母親はイスラエルの爆撃に憤っていた。=18日、ベイト・ラフィーヤ

 ガザ東部国境の町アル・シジャーイヤを19日、訪ねた。前日、内外のメディアが「イスラエル軍の地上侵攻」を報じていたからだ。

 アル・シジャーイヤ(写真下段)はイスラエルとの国境線が目視できるほどの近さだ。町はゴーストタウンと化していた。時折り、世界有数の強さを誇るメルカバ戦車からの砲撃音が聞こえる。

 ただし砲撃はイスラエル領土内からだ。名実ともに陸上侵攻してきた時は、キャタピラーの跡が畑などに大きく深く残る。それはグロテスクな物だ。今回はまだキャタピラーの跡を見ていない。

 アル・シジャーイヤにわずかに残る住民も「メルカバ(戦車)は入ってきていない」と、陸上侵攻を否定する。

ガザ東部国境のアル・シジャーイヤ。正面奥、緑の林がイスラエルとの国境線。=18日 写真:筆者=

ガザ東部国境のアル・シジャーイヤ。正面奥、緑の林がイスラエルとの国境線。=18日 写真:筆者=

 北部国境の町ベイト・ラフィーヤからは、メルカバ戦車の上げる砂埃が、肉眼で見えた。こちらも東部国境のアル・シジャーイヤ同様、戦車がイスラエル領内から砲撃を加えている。

 ベイト・ラフィーヤも住民が脱出し、町は もぬけ の殻だ。

 「ドン」。死の街に戦車砲の着弾音が響く。

 無人攻撃機の飛行音がいつもより大きい。高度を下げているのだ。筆者は空爆と砲撃で破壊された建物を撮影していた。

 撮影を始めて30秒も経っていない時だった。耳たぶを削ぐような金属音がし、地上で大きな音を立てて弾けた。警告弾だ。

 ガザ北部はイスラエル南部の住宅地にほど近い。ハマスのロケット弾が撃ち込まれることから、イスラエルはガザ北部に対して神経を尖らせているのだ。

 陸上部隊が発砲すれば、「陸上侵攻」といえなくもない。イスラエルのネタニヤフ首相が「地上攻撃を拡大強化する」と表明すれば、メディアは「本格陸上侵攻」と書く。

 BBCは“Israel ready to widen Gaza ground offensive – PM”というタイトルを付けて報じた。

 確かに間違いではないだろう。だがこんな表現をすると、ハマスはより先鋭になる。

 イスラエルはハマスの攻撃激化を口実に大規模侵攻する。イスラエルを利する報道となっているのである。

 メディアが虐殺に加担してどうするのだ。

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