ガザ東部国境の町アル・シジャーイヤを19日、訪ねた。前日、内外のメディアが「イスラエル軍の地上侵攻」を報じていたからだ。
アル・シジャーイヤ(写真下段)はイスラエルとの国境線が目視できるほどの近さだ。町はゴーストタウンと化していた。時折り、世界有数の強さを誇るメルカバ戦車からの砲撃音が聞こえる。
ただし砲撃はイスラエル領土内からだ。名実ともに陸上侵攻してきた時は、キャタピラーの跡が畑などに大きく深く残る。それはグロテスクな物だ。今回はまだキャタピラーの跡を見ていない。
アル・シジャーイヤにわずかに残る住民も「メルカバ(戦車)は入ってきていない」と、陸上侵攻を否定する。
北部国境の町ベイト・ラフィーヤからは、メルカバ戦車の上げる砂埃が、肉眼で見えた。こちらも東部国境のアル・シジャーイヤ同様、戦車がイスラエル領内から砲撃を加えている。
ベイト・ラフィーヤも住民が脱出し、町は もぬけ の殻だ。
「ドン」。死の街に戦車砲の着弾音が響く。
無人攻撃機の飛行音がいつもより大きい。高度を下げているのだ。筆者は空爆と砲撃で破壊された建物を撮影していた。
撮影を始めて30秒も経っていない時だった。耳たぶを削ぐような金属音がし、地上で大きな音を立てて弾けた。警告弾だ。
ガザ北部はイスラエル南部の住宅地にほど近い。ハマスのロケット弾が撃ち込まれることから、イスラエルはガザ北部に対して神経を尖らせているのだ。
陸上部隊が発砲すれば、「陸上侵攻」といえなくもない。イスラエルのネタニヤフ首相が「地上攻撃を拡大強化する」と表明すれば、メディアは「本格陸上侵攻」と書く。
BBCは“Israel ready to widen Gaza ground offensive – PM”というタイトルを付けて報じた。
確かに間違いではないだろう。だがこんな表現をすると、ハマスはより先鋭になる。
イスラエルはハマスの攻撃激化を口実に大規模侵攻する。イスラエルを利する報道となっているのである。
メディアが虐殺に加担してどうするのだ。
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