「同じ労働をしているのに、正社員との間に大きな格差があるのは違法だ」。メーデーのきょう、地下鉄の売店で働く非正規労働者が会社を相手取り4,200万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
原告は「全国一般東京東部労働組合 メトロコマース支部」の組合員4人(うち2人は定年を理由に会社から解雇され契約関係はない)。
被告は東京メトロの100%子会社で、地下鉄の売店を運営する東京メトロコマース。
原告ら東京メトロコマースの契約社員(※)は、正社員と全く同じ仕事をしているのにもかかわらず年収(月給と賞与)で300万円もの差がある。しかも退職金はゼロだ。
これは有期雇用(非正規労働者)と無期雇用(正規社員)との間に不合理な労働条件を設けてはならないとする労働契約法第20条に違反する。
請求した損害賠償の4,200万円は、「収入の差額」「解雇された2人の退職金」「精神的慰謝料」だ。
4人が裁判闘争に打って出たのには重い伏線がある。劣悪な労働条件を強いられたまま65歳の定年で解雇されたのでは、そのさき生きてゆけないのだ。
時給1,000円ほどで働き、税金を引かれた後の手取りは13万円前後。家賃と光熱費を払ってしまえば、わずかな食費が残るだけだ。貯金などできる余裕はまったくない。これで退職金がゼロ円なのだ。定年後、どうやって生きてゆけというのか。
代理人弁護士が訴状を提出した後、原告やメトロコマース支部の組合員たちは支援の労働者約200人(ほとんどは非正規)と共に東京メトロ本社前で抗議の声をあげた。定年で解雇された2人以外はストを決行して臨んだ。「ガマンも限界!」ゼッケンの文字が痛々しい。
今年3月末で定年解雇となった加納一美さんは「65歳定年制を適用するなら退職金を支払うべきだ。会社の底辺で一生懸命働いているのは非正規労働者です」と話した。
来年定年を迎える疋田節子さんは涙ながらに訴えた―
「私たちにも家族がいる。一人の息子を養うのは大変です。春闘要求も全てゼロ回答です。『(会社からは)そんなにお金が欲しいならダブルワークでもトリプルワークでもしろ』と言われた。本当に限界なんです。ギリギリのお金で本日、裁判提訴しました。全国の非正規労働者に力をもらえれば嬉しいです」。
彼女たちの叫びは眼前にそびえる東京メトロに矢のように突き刺さったはずだが・・・
政府と東京都が全株保有する東京メトロが『同一労働・同一賃金』の原則を守らない。日本の首都、東京の恥ずかしい一面だ。
定年までギリギリのところで生き、老後は暮らしてゆけない。安倍政権が進めようとしている労働法制の緩和は、こうした非正規労働者をさらに増やす。