フジ産経グループの御用組合ではない方の労働組合がきょう、総務省を訪れ、フジテレビの偏向報道や東電との癒着などについて改善を指導するよう要請した。
要請したのは「反リストラ産経労(松沢弘委員長)」。同労組は1994年、フジ産経グループの非人間的なリストラ合理化への反対を掲げて結成された。
だが、結成後、わずか8ヶ月で松沢委員長が懲戒解雇され、会社側から組合潰しに遭った。松沢委員長と組合は、解雇無効や、不当労働行為の救済などを求める裁判闘争を20年間続けてきたが、昨年、最高裁で敗訴した。
きょう午後、松沢弘委員長らが新藤義孝総務相宛ての要請書を携えて訪れると、総務省は地上放送課と放送政策課の若手官僚が対応した。
松沢委員長らは以下の項目についてフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)と、その子会社・フジテレビを厳しく指導するよう要請した(抜粋)―
・フジHD、フジテレビは東京電力との異常な癒着体制を改め、南直哉監査役を退任させる。(南監査役は元東電社長。2002年に発覚した柏崎刈羽原発のトラブル隠しで引責辞任した)
・フジHD、フジテレビは報道被害者に謝罪し報道被害の再発防止の具体策を策定するともに、2013年6月27日のフジHD第72回株主総会を会社法に即してやり直すこと。
・フジHD、フジテレビは、その支配下にある産経新聞社と日本工業新聞社に対して、反リストラ産経労との団体交渉に応じて、20年を経過した長期争議を話合いで解決するよう指導すること。
松沢委員長らの要請に対して総務省側は「総務省においてその権限はない」「労働争議については厚労省で」と素っ気ない回答に終始した。お役所答弁と言ってしまえばそれまでだが。
要請の場に取材のため同席した筆者にも質問の機会が回ってきたので、次のように問うたー
「放送法は不偏不党を謳っている。だがフジテレビは国論を二分するようなTPPや原発問題では推進派だ。公共の電波を使って推進する側に立つのはおかしいのではないか?」
総務省側は「(局の)番組全体を視なければ不偏不党を判断するのは難しい。(2007年にデータねつ造が発覚した)『あるある大事典』のように問題があれば指導する」と答えるに留まった。
放送内容にまで国が介入するのはあまり好ましいことではない。ただフジテレビを常識に照らし合わせてみた場合、公共の電波を使うに値するのか、と首を傾げる番組が目につく。
バラエティをはじめとする低俗番組で国民の関心を政治経済からそらす。そこに持ってきて「原発再稼働は必要」「TPPは加盟した方が得」と刷り込む。洗脳装置と言うこともできる。不健全な世論形成だ。
マスコミ労働者とマスコミ企業との健全な関係を目指して立ち上がった「反リストラ産経労」の闘いは、メディアと国民世論の関係をまっとうなものにする闘いでもある。