「首のない写真」「差出人を詐称した手紙」「反原発カルタをパロった“反・反原発カルタ”」…おびただしい数の展示物はいずれも反原発派に対する嫌がらせの品々だった。「よくもこれだけ嫌がらせができるものだ」。筆者は身の毛がよだった。
去る8月10・11日、新宿区民ホールで「反原発へのいやがらせの歴史展」が開かれた。30年以上、原発運転差し止め訴訟などに携わってきた海渡雄一弁護士らが主催した。
チェルノブイリ原発事故(1986年)を受けて日本でも反原発運動が盛り上がった。90年代の反原発運動に対する「嫌がらせの証拠物件」とも言える品々が、大半を占める。反原発運動が勢いづくと嫌がらせも増えることがうかがえる。
主催者の海渡弁護士によると、嫌がらせで最も多いのは手紙だ。海渡氏らが訴訟のために集めた嫌がらせの手紙だけでも数千通にのぼる。来場者のなかにも1日100通を超える手紙を受け取ったという人がいた。
手紙のほとんどは日本各地から届く。北から南から、全国的な規模だ。ロンドンやフランクフルトから届いたものもあった。
誰が、どういう組織が送りつけたものかは分からないが、かけられた労力にはまったく恐れ入る。
もちろん嫌がらせは展示物だけではない。無言電話がかかってきたり、生理用品や、動物の死体を送り付けられたりした例もあるという。
これらの嫌がらせの犯人は、未だ特定されていない。
「もし、嫌がらせに関わった人がいたら、ぜひ名乗り出てほしい。私たちは名乗り出てくれた人を決して糾弾したりはしない。真相を究明し、今後同じようなことが繰り返されないようにしたい」。海渡弁護士は柔和な表情で語った。
今後、原発の再稼働や輸出に向けた動きに拍車がかかるだろう。反原発運動も盛り上がることが予想される。
海渡弁護士は警告した。「90年代とは形を変えるだろうが、反原発への嫌がらせは必ず繰り返される」。
私たちは、この過去から学び、嫌がらせに対抗する術を持たねばならない。
山本太郎・参院議員も会場を訪れた。「こういうの(嫌がらせ)は笑い飛ばして、まじめに受け止めてはいけない。僕を展示したら面白いんじゃないか」。反原発を口にしたため仕事さえも失ってしまった山本議員ならではのユーモアに会場は沸いた。
“反原発を進めるためには、嫌がらせに屈している暇などないのだ” 山本氏は言外に語りかけているようだった。
《文・写真=篠原麻奈美》