チェルノブイリ原発事故後、親や子供が心に受けた傷を調査・研究してきたエレーナ・トルスタヤ准教授(サハロフ国際環境大学=ベラルーシ)が昨夜、都内で講演した。(主催:DAYS JAPAN/NPO法人 沖縄・球美の里)
トルスタヤ准教授によれば事故当時、チェルノブイリ原発から30km圏内には220万人が住んでいた。うち子供は55万人。これらすべての人々を調査したわけではないが、母親の56%、父親の48%が不安感を持っていた。
だが親たちは(あえて)何も起きなかったように振る舞った。しかし自尊心は薄れ、他人とのコミュニケーションがうまくとれないようになった。
子供は情緒不安定になる。すすり泣く。吃音障害、夜尿症などが現れるようになった。原発事故処理に当たったリクビダートル(収束作業員)の子供たちの3人に一人は心理的問題を抱えていたという。
トルスタヤ准教授は具体的に女の子の例を挙げた―
1986年12月に生まれる(事故はこの年の4月)
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1995年、甲状腺ガンの手術
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1998年~2001年の症状
「無力症」「不安感」「うつ」「呼吸器系の障害」
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その後、結婚し出産、子供は心臓に欠陥があった
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離婚
トルスタヤ准教授は汚染地帯を離れての保養を勧める。「ゲームセラピー」「アートセラピー」「ヨガなどのリラクゼーション」などのリハビリが効果的であるとした。
トルスタヤ氏が強調したのは「低レベルの汚染(日本風に言うと低線量被曝)は、神経系、免疫系、内分泌系の調節機能を阻害する」ということだった。遠隔地での保養を勧めるのはこのためでもある。
ベラルーシでは1991年(旧ソ連時代)に「被災者社会保障法」が制定され、20万3,000人が恩恵を受けた。医療費や移動費などを国が負担してくれるようになったのである。
日本は福島原発事故を受けた「子ども被災者支援法」がありながら、基本方針さえ策定していない。「違法である」として、明日(22日)にも福島県の住民が国を提訴する。ベラルーシの取組みを基本方針として参考にすべきであろう。