タクシム広場とゲジ公園はこの土日(日本時間8~9日)、明るいうちから人々で埋め尽くされた。歩いて前に進むのも一苦労だ。人いきれとケバブの油っこい煙で息苦しささえ覚える。
広場と公園を合わせると東京の日比谷公園よりも広い。そこにありとあらゆる組織、個人参加の老若男女が集まった。労働組合、政党、学生、年金生活者…。右も左も、富めるも貧しきも関係ない。
「タイイップ イスティファ(タイープ・エルドアン首相、辞めろ)」の大合唱が広場と公園のあちこちで起きる。
9日午後(日本時間9日夜~10日未明)には、公立病院の医師たち約200人が、通りをパレードしながらタクシム公園に繰り込んだ。バイク愛好会も50台を連ねて乗り込んだ。医師もライダーも「エルドアン辞めろ」がスローガンだ。
非合法組織の旗も翻った。PKK(クルド労働者党)だ。指導者のアブドラ・オジャラン氏は10年以上も獄中に置かれたままである。広場は「秩序ある無政府状態」となっている。
~マスコミ信用しない国民、政府は世論操作できず~
ゲジ公園でオキュパイを続ける人々にインタビューすると、全員例外なく「タイープ(エルドアン首相)は独裁者だ」と先ず口にする。
そのうえで元教師の男性(70代)は「タイープは強盗みたいに国を奪った」と吐き捨てるように言った。すべての利権にエルドアン首相が絡んでいるという意味だ。エルドアン氏率いるAKP(公正発展党)支持者でなければ、公共事業の入札にも参加できないといわれる。
汚職以上に人々の反発を買っているのが、個人の自由の制限だ。「酒の夜間販売禁止法」は、一例に過ぎない。法律にこそなっていないが、エルドアン首相は「女性は3人以上産むべき」と口にして憚らない。
「自由を守るためここを占拠し続ける」。公園でテントを張る人々は異口同音に言う。
国民は権力に検閲され買収されているマスコミを信用していない。政府の世論操作は効かないのだ。メディアと国民との関係は日本よりはるかに健全と言える。
エルドアン首相は9日午後(日本時間9日夕)、アンカラで支持者を集め、「デモは違法」と強気の姿勢をあらためて示した。
両者とも譲歩する気配はない。予断を許さない状態が続きそうだ。
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関西の篤志家S様ならびに読者の皆様のご支援により、トルコ取材に来ております。