これほど国民の生活と健康に無神経な宰相が、かつていただろうか。大飯原発を再稼働させた野田佳彦首相が7日、原発事故がまだ収束していない福島を訪問した。
福島県庁前で首相を待っていたのは、地元住民たちによる「帰れコール」と「再稼働反対」のシュプレヒコールだった。
県庁前には「野田首相とお話がしたい」という女性たちの姿があった。子供が被曝している母親もいる。庁舎に入構しようとしたが、警察官に阻止された。
福島県三春町出身で東電と政府を刑事告訴した告訴団長の武藤類子さんも、その中にいた。
「野田さんは何しに来たんだべ。福島県民の声をちゃんと聞かず庁舎の中に入ってしまうのは、バカにされてるみたいだ。再稼働は正気の沙汰とは思えない。福島の事故が大変な事故だという認識がないのではないか。再稼働は福島の事故をなかったことにしたいということ」。武藤さんは大飯原発の再稼働を厳しく糾弾した。
「私たちは本当に怒っている。福島の状態を考えたら再稼働なんてできないはず」。こう憤るのは郡山市議会の駒崎ゆき子議員だ。
午後5時25分、野田首相が到着すると抗議のシュプレヒコールが一段と大きくなった。3時頃から若者たち20人余りが「原発なくせ」「福島返せ」などと声をあげていたのだ。
福島市内に住む女性(会社員)がトラメガを持ち県庁に向かって叫んだ。「野田さん、あなたは首相をすぐに辞めるかもしれませんが、私たちは子供たちと一緒に福島にずーっと住み続けなきゃいけないんです」。
野田首相は佐藤雄平知事と約1時間、会談したようだ。プルサーマル計画を容認した知事と再稼働を進めた首相。日本を破滅に追い込むようなことをしでかした二人は、何を語り合ったのだろうか。
「野田さん、福島は安全だから泊っていって下さい」。女性の願いをよそに、首相を乗せた車は猛スピードで福島県庁を後にした。
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者のご支援により維持されています。