東電福島第一原発事故をめぐる『国会事故調査委員会』は21日、浪江町長ら行政のリーダーから事情を聴いた。
福島県二本松市民会館で開かれたヒアリングには200人近い浪江町民が傍聴に訪れた。二本松市には多くの浪江町民が避難している。「政府や東電の対応はどうなっているのか?」「今後の補償は?」……
国会事故調は政府が設けた機関ではない。それでも東京から来た委員会は「お上」の機関だと思っているのだろう。町民たちは不信感を露わにした。
冒頭、黒川清委員長が挨拶を始めると「聞こえねえぞ」とヤジが飛んだ。スピーカーを通して、声はよく響いているにもかかわらずだ。
「国会事故調は政府から独立した民間の調査委員会です」。黒川委員長は町民の不信感を拭うために、わざわざ言った。
浪江町の各界の指導者たちは次のように話した――
「除染、事故収束、インフラ整備、雇用、健康管理の方向性を示さないまま、中間貯蔵施設ができ、警戒区域が解除される。我々の思いと方向が全く違う」(吉田数博・浪江町議会議長)。
「スピーディーの情報を知らないまま私たちは放射線量の高い地域に避難した。子供たちは校庭で遊んだ。殺人的行為だ。無責任な国の危機管理の実態をしっかりと調査して頂きたい」(鈴木充・浪江町行政区長会長)。
叶谷守久・相馬双葉漁協 請戸支所長は、東電が汚染水を海に流し続けていることに触れ次のように述べた。「漁業が再開できないのは痛い。東電は汚染水をタンクに移しているが、永遠に移し続けるわけにはいかない。だから意図的に汚染水を海に流しているのではないか?海は放射能の最終処分場ではない」。
傍聴席のある夫婦に感想を聴いた。夫は「昔話は聞きたくなかった。肩透かしを食った。これからどうなるのか?先が見えない」と顔を曇らせた。妻は「漁協は(補償について)要望を言ってほしかった」と口をへの字に曲げた。夫は務めていた企業が被災したため、単身、横浜で働く。妻、小学生の子供、年老いた父母は二本松市で避難生活を続ける。
ヒアリングの後、タウンミーティングに移った。
初老の男性がマイクを握り訴えた。「仮設(住宅)に住んでからこういった会(現地ヒアリング)をやって下さい。東京にいたのではわからないほど苦しい生活が続いている。我々の未来を作って下さい」。
会場からは「住んでみろ」とヤジが飛んだ。
山形に避難中の町民男性は「だれも責任を追及していない。責任を追及するつもりがあるのか?」と疑問を投げかけた。
黒川委員長は「(責任問題は)司法がやる仕事だ」と返答した。その上で「政府の人を守るつもりはない。この後、証人喚問などが行われる仕組みが用意されている」と含みを残した。
東京に電力を供給するが自分たちは1ワットも使わない原発のおかげで、生活はメチャクチャに破壊された。原発=東京・お上への不信感と憎しみが、避難民の心には澱のように積み重なっている。
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