
「PEACE THROUGH STRENGTH」(力による平和)は日本向けの強いメッセージだ。=28日、米空母ジョージ・ワシントン艦上 写真:総理官邸HPより=
高市首相は昨日28日、トランプ米大統領と共に横須賀港に停泊中の米原子力空母「ジョージ・ワシントン」に乗艦した。
高市首相は終始ご機嫌で米国の目論見通りとなったようである。
理由を縷々ご説明しよう―
20年以上も前の話で恐縮だが、田中は太平洋上を行く米空母『インディペンデンス』(満載排水量8万643トン)に乗艦したことがある。
同空母は退役を控えていたとはいえ極東海域にニラミを利かせていた。中国が現在のような海軍力を持っていない頃、『インディペンデンス』が台湾海峡を通過するだけで充分な威嚇効果があった。
冷戦時代は核を積載していたことも明らかになっている。

090610-N-9565D-019 YOKOSUKA, Japan (June 10, 2009) ñ Sailors ìman the railsî aboard USS George Washington (CVN 73) during the shipís departure from Fleet Activities Yokosuka. George Washington is currently underway supporting security and stability in the Western Pacific ocean, while on her first summer deployment from Fleet Activities Yokosuka, Japan since becoming the Navyís only permanently forward deployed aircraft carrier. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Clifford L. H. Davis/RELEASED)
空母までは厚木基地から連絡機で飛んだ。
全長319m。陸が動いているようだった。米国の巨大な軍事力そのものに思えた。
可能であれば洋上を行く空母に高市首相を乗せた方が、米の軍事力を知らしめるのに効果的だったはずだ。
だがそれは不可能である。戦闘機や輸送機を空母に着艦させるのには、機体の最後尾から垂らしたフックを甲板上のロープに引っ掛ける。
フックがかかると空母は油圧で戦闘機や連絡機を後方に引っ張る。機体が前に飛び出さないようにするためだ。

米空母ジョージ・ワシントンの飛行甲板に降り立った高市首相とトランプ大統領。=28日、写真:総理官邸HPより=
フックがかからないことも当たり前のようにある。戦闘機や連絡機は脚が空母に着くと同時にエンジンを全開にし飛び立とうとする。海に転落しないようにするためだ。これがタッチ・アンド・ゴーである。
タッチ・アンド・ゴーが失敗すれば機体は海に転落する。確率は低いが着艦に失敗した戦闘機が海に落ちることがある。米海軍は保険に入っているそうだ。
高市首相を連絡機に乗せることはできないのだ。日本の首相を乗せた機体を海に転落させたりしたら米軍は世界の笑い者となる。
夜間の着艦は至難の業となる。横田など日本国内の陸上基地で夜間発着訓練をする理由がここにある。空母は24時間態勢で戦闘可能な状態にしておく必要があるからだ。高市首相は理屈だけでもタッチ・アンド・ゴーを知っておいた方が、良きにつけ悪しきにつけ米軍への理解が深まっただろう。(田中は米軍を讃えているわけではない。くれぐれも誤解なきよう。)
停泊中の空母乗艦は不完全だったが、高市首相は米軍の力をまざまざと見せつけられたはずだ。トランプ大統領の唱える「Peace through Strength」の虜になったとしても不自然ではない。
オチは米製兵器を爆買いさせられ、有事の際、自衛隊が先鋒役となることか。

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At sea with USS George Washington (CVN 73) Sep. 28, 2002 — The nuclear-powered aircraft carrier transits the Atlantic Ocean as she returns from a regularly scheduled deployment conducting missions in support of Operation Enduring Freedom and Operation Southern Watch. The Washington is homeported in Norfolk, Va. U.S. Navy photo by Photographer’s Mate 3rd Class Summer M. Anderson. (RELEASED)
~終わり~
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