
韓国人留学生はホームから転落した日本人男性を救おうと線路に飛び込んだ。=JR新大久保駅 撮影:田中龍作=
乗降客でごった返す夕刻のJR新大久保駅で泥酔した男性がホームから線路に転落した。
居合わせた韓国人留学生の李秀賢(当時26歳)さんと日本人カメラマン関根史郎(当時47歳)さんは、男性を救うため危険も顧みず線路に飛び込んだ。
3人ともホームに入ってきた電車に轢かれて死亡した。2001年1月のことだ。
世論は騒然となった。平成の天皇(現上皇)が死亡した韓国人留学生の両親を、皇居に招待して慰労したほどだ。

町はコリアタウンの雰囲気が漂う。=新大久保 撮影:田中龍作=
それから10余年。韓国料理店などが立ち並びコリアタウンの異名をとる新大久保の町は、ヘイトの嵐が吹き荒れるようになった。
移民排斥を叫ぶレイシストたちが徒党を組み、「朝鮮人は日本から出て行け」「中国人は出て行け」などと叫んで歩くようになったのである。
最近では「日本人ファースト」を売りにする国政政党が好んで街宣をする。
日本人を救おうと自らの命を投げ出した韓国の留学生に顔向けできないではないか。

韓国人留学生と日本人カメラマンの勇気をたたえたレリーフ。=JR大久保駅構内 撮影:田中龍作=
間違った政策で日本は貧しくなった。にもかかわらず「貧しいのは移民のせいだ」と責任を転嫁する風潮が目に付くようになった。
「外国人の不動産取得に制限を」「外国人に健康保険を不正利用させるな」…排外主義を唱えれば選挙で議席を伸ばすのだ。極右政党でなくとも排外主義を唱えて国民の心を上手にくすぐる。
恩を仇で返す。いやヘイトで返す。いつから日本人はここまで醜くなったのか。
近隣諸国との融和を唱える石破首相は訪韓した際、李秀賢さんの墓前に献花した。せめてもの救いだった。
~終わり~
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