
自民党総裁イコール日本国総理ではなくなるのか。=9月24日、秋葉原 撮影:田中龍作=
石破首相が引きずり下ろされ、フルスペックの総裁選が始まった時、我々庶民は棄民されたのではないか、と微かな怒りを覚えた。
いま高市自民の混迷と居直りを目のあたりにし、怒りは本物に変わった。本当に棄民されたのだ、と。高い税金と保険料を払っているのに、と思うと怒りはひとしおだった。
高市政権は法治国家であることを止めようとしているように映る。
2千万円もの裏金を手にしていながら秘書だけが略式起訴され、統一教会とも関わりの深い萩生田光一を幹事長代行という要職に登用したのである。
庶民はコンビニで百数十円のオニギリを万引きしただけで逮捕され、インボイスで血の一滴まで税務署に吸い取られる。
だが自民党の議員であれば、何千万円と脱税しようが許される。秘書給与を詐取しても逮捕されない。
有権者とマスコミが政治をしっかり監視していれば、日本はこんな国にならなかった。

普通選挙を求めて警察に拘束されたデモ参加者。=2019年、香港 撮影:田中龍作=
国政選挙こそ投票率が50%に達するが、地方選挙は30%そこそこだ。3人に1人しか投票に行っていないのである。
香港を見よ。若者たちは普通選挙と言論の自由を勝ち取るために人生を懸けた。いまだ獄中にある民主活動家は少なくない。
中国共産党を批判していた新聞社の社主は、国家内乱罪で終身刑に処せられる可能性さえある。「アメリカと結託し…」と屁理屈をつけられて投獄されているのだ。
日本はどうだ。せっかくの選挙権がありながら国民は3~5割しか投票に行かない。言論の自由も保証されているのに、新聞テレビは権力に媚びへつらう。
香港民主化運動の取材でデモに参加している学生の話を聞くことができた。それも過酷な「デモ隊狩り」から救出される車の中で。
田中が「危ない目に遭いながらもデモに参加するのは何故か?」と聞くと、学生は「普通選挙制度が欲しいから」と答えた。目は少年のようにキラキラと輝いていた。

高市人事で復権した萩生田幹事長代行はツボ+裏金議員の代表格だ。=昨年1月、自民党本部 撮影:田中龍作=
民主主義の有難さを知るためにも日本はいちど墜ちる所まで墜ちたほうがいい、との思いが頭をかすめることもある。
だが暗黒の独裁国家になってしまうと抜け出すのはほぼ絶望的だ。
今、この国は分水嶺にある。
~終わり~
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