おばちゃんが支えてきた地域の繋がりを壊すコンビニ経営の論理

写真と本文とはまったく関係がありません。

高橋和子さん(仮名・74歳)は首都圏郊外のコンビニ店に勤務する。同店が個人商店だった頃から勤めているため、勤続29年となる。

数十メートルおきにある都心のコンビニと違い、郊外のコンビニは、隣の店に行くにも車を走らせなくてはならない。地域には欠くことのできない存在なのである。

店は自ずとコミュニティーの拠点になる。約30年も拠点で働いてきた高橋さんは、全員ではないが、お客一人一人の事情まで知る。

こんなことがあった。

得意客の一人にマダラボケのお爺ちゃんがいた。いつものように店に来たのだが、その日はお金の取り出し方がおかしかった。ボケが進んだのである。

高橋さんはすぐにお爺ちゃんの娘に電話をした。娘さんの電話番号を控えていたのだ。娘さんがすぐに連れに来た。

もしあのまま帰していたら、お爺ちゃんは迷子になったかもしれなかった。娘さんは「父がいつもお世話になっています」と言ってお爺ちゃんを連れて帰った。

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こんなこともあった。

子どもの頃から来店していた20代の女性が、「結婚することになりました」と言ってフィアンセの男性を店に連れて来たのである。

利用客の成長を見届けることができたのは、地域に溶け込んだ店に29年間もいたからだ。

地域を愛し地域に愛された高橋さんだったが、今月一杯で店をリストラされる。オーナーが来月1日から変わるからだ。新オーナーは、店員の若返りを図ろうとしており、高橋さんの他、高齢の男性店員(60代後半と見られる)も解雇される。

高橋さんを慕う常連客は少なくない。「リストラ撤回の署名運動をする」と立ち上がる人も現れた。

だが9月30日まで店を経営する現オーナーが、高橋さんの再就職を斡旋した。再就職先は隣町のコンビニ店である。見る人は見ているのだ。

「人と人のつながりがある暖かい店がなくならないでほしい」。まもなく店を後にする高橋さんは、目を赤くしながら語った。


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