生きていれば104歳になる母親の遺骨を息子がリュックサックに入れていた、という東京・大田区で発覚した事件。ワイドショーの司会者は「年金を不正受給していたかもしれませんねえ」などと話していたが、筆者は別のことが頭に浮かんだ。
息子はワーキングプアで葬式を出す金がなかったのではないか、と。葬式には莫大な費用がかかる。5~6年前、妻の父が心臓マヒで死亡し、こじんまりとした葬式をあげた。参列者は親戚だけ。食事も義父の家で取ってもらった。これ以上できない、と言うほど節約したのだが、葬儀社には300万円払った。
筆者の父は生前「死ぬのにも金がかかる」と言い、葬式のための金をとり置いていた。親戚筋に冠婚葬祭を豪華に挙げたがる人がいたりすると大変だ。そのために借金を負ったりする羽目になることもある。
筆者は紛争地域に取材に行く機会が多いので、天寿を全うせずにあの世に行く可能性が普通の人よりも高い。だが、葬式を出す蓄えはない。このため「葬式は出さなくともよい」という遺言を公証役場で作ってもらった。後に残された妻に借金を負わせたくないからだ。これだと火葬場に払う数万円だけで済む。
一日一日、食っていくのがやっとのワーキングプアが親の葬式など出そうものなら、借金で夜逃げしなくてはならなくなる。ワーキングプアでなくても葬式の経済的負担は多大だ。親の葬式で莫大な借金を背負わされたためにホームレスとなり、山谷に流れ着いた洋食のコックがいた。
十分な蓄えがない人は「葬式は出さなくてもよい」という遺言を公証役場で作ってもらうことをお勧めする。親戚にうるさい人がいても大丈夫だ。
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