
ここで催涙弾を撃ち込まれたら生きているのが不思議だ。しかも堰を切ったごとく機動隊は押し寄せてくる。棍棒でメッタ打ちにされるのだ。最前線に立つ若者の覚悟と豪胆さには敬服する他ない。=24日夜、イスタンブール市役所前公園 撮影:田中龍作=
人民解放軍が警察に紛れ込んで人々を弾圧した香港の民主化デモで、勇武派の若者たちは遺書を書いてデモに参加していた。
トルコの若者も似たような状況にある。遺書は書かなくても死ぬ覚悟はついているはずだ。でなければ最前線で凶暴な機動隊と対峙できるわけがない。
前回(2013年)の反政府デモでは死者が出た。催涙弾を頭に受けて死亡したのである。トルコの機動隊は催涙弾を容赦なく水平撃ちしてくるからだ。
トルコ警察はイスラエル軍よりも悪質といえば悪質だ。イスラエル軍がパレスチナの難民キャンプを攻撃する際は、キャンプの出入口を塞ぐ。それでも逃げ道を確保しておけば取材した写真を無事持ち出すことは可能だ。
ところがトルコ警察は催涙ガスを広範囲にわたって撃ち込んでくるため、逃げ道が塞がれる。
田中は逃げ道を確保していたのだが、逃げ道が逃げ道でなくなった。窒息死も覚悟した。倒れていた田中を、ガタイのいい青年が抱きかかえて連れ出してくれなかったら、どうなっていたことやら。

ガス弾の白煙が垂れ込める。気管支が痛くなって呼吸が困難になる。吐き気も催す。=24日夜、イスタンブール市役所前公園 撮影:田中龍作=
毒性は明らかにイスラエル軍や香港警察の物より強い。デモ隊の最前線に立つ若者の心肺機能の強さと気管支の強靭さには驚くばかりだ。
デモ隊と機動隊の間には最初、フェンスが設えられた。デモ隊の最前線から数百人規模の機動隊の隊列までは、ゆうに50mはあった。
ところがデモ隊がフェンスをゆすったこともあり、警察はフェンスを取り外してしまったのだ。
デモ隊はジリジリと前進した。最終的には機動隊員の口臭が伝わるくらいの至近距離まで進んだ。
これだけの近さでガス弾を雨あられのごとく撃ち込むのである。間違いなく死者が出る。

デモに繰り込む二人。機動隊と対峙する最前線で肩を組みシュプレヒコールをあげるカップルを時おり見かける。二人の無事を願わずにいられなかった。=24日夕、イスタンブール市役所近く 撮影:田中龍作=
~終わり~
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トルコ情勢は重大な局面を迎えました。トルコは地域の大国としてウクライナ情勢や中東情勢に多大な影響を与えます。日本の外交政策にも影響を及ぼすことになります。
破産したら隅田川に身投げするくらいの決意で田中は取材に来ております。御支援何とぞ申し上げるしだいです。