内部被曝は福島の子供たちだけに留まらない。セシウム汚染された牛肉が全国に流通していたことが問題となるなか、子を持つ親たちが農水省を訪れ「食の安全」を確保するよう要望した。
うだるような暑さがぶり返した25日昼、霞が関まで足を運んだのは「いのちを守るお母さん全国ネットワーク」の父母たち約10人。
農水省は生産局畜産振興課の能登俊二課長補佐ら3人が対応した。
放射能への感受性が強い幼子や就学期の子供を持つ母親たちは、食物を通しての内部被曝が心配でならない。エプロン姿の彼女らは農水省の能登課長補佐らに「汚染された牛肉の販売店名まで公表する」「基準以上に汚染された食品は国と東電が買い取る」ことなどを要望した(※)。
だが我が子の「食の安全」を願う父母たちの声に、霞が関の縦割り行政が立ちはだかった。
母親:横浜市の給食に(原発事故)被災地の牛肉が使われていたが…?
農水省:学校給食については文科省のプログラムのなかで…
父親:肉の産地を見ても国産としか書いていないが…?
農水省:産地表示は消費者庁。
母親:(放射能への)感受性が強い子供たちが口にする物は厳しい数値基準を設けてほしい。
農水省:それは厚労省。
父母たちの間からは「バラバラですね。何かあった時にどこが責任を取るんですか?」と声があがった。
子供の「食の安全」に行政の腰はあまりにも重いと言わざるを得ない。マスコミがそれに輪をかける。「食べても大丈夫神話」を垂れ流すからだ。こんな出来事が横浜市であった――
ある母親が自衛策のために子供に弁当を持たせた。だが他の児童は給食を食べる。親が共稼ぎだったりすることもあるが、マスコミによる「食べても大丈夫神話」の刷り込みが利いているからだ。子供は肩身の狭い思いをし、7月から学校を休むようになった。
「縦割り行政の壁を乗り越えなくてはならない」。いのちを守るお母さん全国ネットワークは今後、文科省や厚労省にも要請することを決めた。
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(※注)
「食の安全」確保のための要望書
1. 今まで流通した牛肉の流通ルート、販売店の名前など細かく公表する。
2. 今後、放射性物質に対して感受性が強い乳児・子ども・妊婦などがより安全なものを選べるように基準値以内でも表示を義務付ける。
3. 今後、より細かく食品をチェックできるように各自治体で、独自に食品内放射性物質を検出する機械を購入し、検査できるように国が補助をする。
4 給食や保育園の食事など子どもたちが食べるものに関して、放射線濃度の低い安全
な産地のものを使う。
5. 消費者の買い控えを防ぎ、第一次産業を守る為に、産地の表示を「国産」だけではな
く、もっと細かい「福島県〜市産」「〜県〜市加工」などより細かい県・市までの産地明記の義務づけを行う。
6. 基準値以上に汚染された食品を東電や国が買い取ること。
7・ 大人より被曝の影響を受けやすい子どもたちや妊婦の方の為に、現在の暫定基準値
よりさらに低い“子ども基準値”を設定し、流通経路や、販売方法を工夫する。