脱原発社会に欠くことのできない再生可能エネルギーの行方に暗雲が立ち込めている。原子力発電を維持したい自・公と経済産業省が「再生可能エネルギー推進法案」の骨抜きを図っているからだ。電力に占める自然エネルギーの割合について上限を設けようとしているのである。上限はキロワットアワーあたり0・5円だ。
海江田万里経産相は15日、衆院本会議で「消費電力に対する賦課金の上限を、賦課金が
キロワットアワーあたり0・5円を超えないように制度を運用する」と答弁した。経産官僚が法案に書き込もうとしている条文を海江田大臣がオウム返しに読んだだけである。
賦課金だとか難解な専門用語を使っているが、要は「電力料金に占める自然エネルギーの上限は0・5円とする」ということだ。仮に1時間当たり1キロワットの電力を使っている家庭であれば自然エネルギーは0・5円までしか占めることができない。1万キロワットの工場では5千円となる。
自然エネルギーの供給と需要が伸びないよう、足かせをはめようとしているのである。原発からの電力を維持するためである。実際、経産官僚も「自然エネルギーは4%しか伸びない(全体の電力量の中で4%しか占めない)」と認めているのである。菅首相が目標に掲げる20%(全電力量に占める自然エネルギーの割合)には遠く及ばない。
【政界の大勢は原発維持】
「再生可能エネルギー推進法案」をめぐっては、原発推進派の自・公と早く法案を通して菅首相を引きずり降ろしたい民主が水面下で早期成立を目指し、調整を続けている。安住淳国対委員長は朝日新聞(25日付)の取材に対して「価格面で高い負担をさせない仕組みにすれば方向性が見えてくる」と述べている。国会対策の最高責任者が“自然エネルギーの占める割合を抑えた方がよい”との考えを示したのである。政界の大勢は原発維持であることが分かる。
与野党と経産省の動きに対して自然エネルギーの普及を目指す議員は危機感を抱く。山田正彦氏(民主)、阿部知子氏(社民)らは26日、国会内に経産官僚らを招きヒアリングを行った。
議員の間からは「なぜ0・5円なのか?」「自然エネルギーを普及させないための方策としか思えない」などとする質問や意見が相次いだ。
経産官僚は専門的な概念や数字を早口でまくし立てた。聞いていて何が何だか分からない。約20人の議員が出席していたが、官僚の説明を咀嚼できた議員は何人いただろうか。「ここがおかしい」とマヤカシを指摘できる議員はいただろうか。
ヒアリングの後、阿部知子議員らが記者会見を持ったので筆者は二つほど注文をつけた。
・経産官僚のマヤカシを国民が分かるよう、ヒアリングには民間のエネルギー専門家を入れよ。
・ヒアリングは次回以降も議員会館で行ってほしい。院内だと記者クラブしか入れない。東電と経産省寄りの記者クラブが国民の立場に立った報道をするとは思えない。