開戦から27日目、3月22日。
戦争をしていても食料品店はどこかが開いている。世界のどの戦地でも、だ。
常在戦場のパレスチナ自治区ガザでは、イスラエルのミサイルが雨あられと降り注いでいても、開いている食料品店は探せばある。
2千人を超えるパレスチナ人の死者を出した2014年戦争の取材を思い出す。田中は現場からホテルに戻る際、欠かさず食料品店に寄って、飲料水、果物などを仕入れた。
ちなみにナン(パン)はホテルの朝食で出た物を1枚部屋に持ち帰っていた。
キエフ市とその周辺地域ではスーパーが営業している。肉屋、果物屋…それぞれの露店も並ぶ。
激戦地イルピン入り口のスーパーが営業しているのには驚いた。パン、ハム、チーズ…住民が買い求めるのは、よその地域の店と同じく食料だ。
「ドン、ドン」「ドカーン」…砲声と着弾音がすぐ近くで鳴り響いても、住民はレジに並ぶ。
戦争が続くと経済が回らなくなる。収入が途絶える。スーパーで食料を買えなくなった人たちに向けた炊き出しもある。
場所は同じくイルピン入り口だ。
生き抜くためには食べなければならない。人々は命懸けで食を求める。
キエフの北に隣接するブロバリィの物流倉庫が爆撃に遭った。屋根が破損し白煙を噴いていた。現場を見たが営業は不可能だ。
20日はキエフのスーパーマーケットが爆撃で破壊された。
長期間、食料を絶たれたら人は餓え死にする。ロシア軍は真綿で首を絞めていくようにキエフを追い込んでいる。
餓死者が続出すれば、強気のゼレンスキー大統領といえどもお手上げだろう。
田中は物流が途絶えた時に備えてパンを乾燥させ、貯蔵している。いざとなったらパンを水に浸して食べるつもりだ。ただ、そのパンとていつまで持つか。
爆死よりも餓死の方が現実味を帯びる。
~終わり~
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カードをこすりまくっての現地取材です。 ↓