「ウクナイナ軍による大量殺害が起きている」。プーチン大統領がショルツ独首相との共同記者会見(15日、モスクワ)で述べた。BBCのライブで世界に伝わった。
「プーチンさん。アンタ本当にKGBの幹部だったのか?」。田中は独裁者の耄碌(もうろく)に底知れぬ不安を覚えた。
ふつうエスニック・クレンジング(民族浄化)は、優勢な勢力が劣勢な勢力を大量殺害する。惨劇を数えあげればきりがない。
ごくごく稀に劣勢だった勢力が優勢だった勢力を虐殺するケースがある。「逆エスニック・クレンジング」だ。
コソボ紛争(1990年代)でNATOが軍事介入した後で起きた。
セルビア系住民から虫ケラ同然に扱われていたアルバニア系住民は、NATOの進駐で一転優位となった。
人道介入を掲げたNATOはセルビア側を完膚なきまでに叩いたのである。
田中は現地で双方の住民から話を聞いた。アルバニア系住民は「カゴの中の鳥ではなくなった。(セルビア系住民に)殺されることもなくなった」とNATOの軍事介入を喜んだ。
セルビア系住民は「(アルバニア系住民から)隣人がいとも簡単に撃ち殺された」と言って、コソボのはるか郊外に逃れた。
ドンバスはロシア側の支配下にある。ウクライナは民族構成比でも少数派だ。ウクライナ側は明らかに劣勢なのである。
先に手を出せばロシア軍の本格介入を招くだけだ。
劇的な力の変化がない限り、劣勢な勢力が優勢な勢力を大量殺害するなどと云うことはありえない。
コソボ紛争の際、ロシアはセルビア側についていた。年寄りはもの忘れが激しいというが、プーチンさんはコソボの教訓を忘れたのだろうか。
ニセ旗作戦にしてはお粗末である。
~終わり~