「きのうも私が診ていた患者さんが亡くなったんですよね」。首都圏でコロナの訪問診療を続けるA医師は、まるで日常会話のような口調で語った。死と向き合うのに慣れっこになったのだろう。
死亡したのは50代の男性。感染が確認されてわずか3日目。在宅用の酸素濃縮器を入れた翌日のことだった。基礎疾患の糖尿病があった。
A医師は「抗体カクテルがあったら救えたかもしれない」と悔やむ。「デルタ株(に感染した患者)はとにかく重症化するのが早い」と恐れる。
重症化のスピードに医療が追いついて行けない原因として、医師は保健所の対応を挙げた。(保健所を批判しているのではない。保健所の機能を低下させた政府を批判しているのだ)
医師が在宅診療すると報告書を保健所に送る。報告書を見て保健所は患者をすぐ入院させるべきかなどを決めるのだが、この時代にFAXで報告書を送るのだそうだ。
FAXは積み上がっていて、山の中にリスクの高い在宅患者が紛れ込んでいる。一刻も早く入院させなければならない在宅患者が見落とされがちなのだ。
A医師は「PCで報告書を管理すれば、リスクの高い患者は一瞬で分かるのに、政府は頭が悪過ぎる」と憤る。
「リスクを点数化して、基礎疾患があったり、高齢であったりすれば、リスクの点数が高いようにする。点数が高ければ、レッドアラームが点灯するようにする」と提言した。
話を抗体カクテルに戻す。高額な抗体カクテルを使うには保健所に申請書類を出さねばならない。申請書類は煩雑で書くのに時間がかかる。
抗体カクテル療法を在宅で使えるよう野党などが求めているが、かりに使えるようになったとしても、上述したような高いハードルが横たわっている。
保健所がFAX対応しているため、在宅患者の急変に気付くのが遅れる。一分一秒が惜しい医師に煩雑な申請書類を書かせる。
「必要な人(在宅患者)に、必要なタイミングで、必要な薬が届くようにして下さい」。
「オリパラを開けば、こうなることは分かっていた。オリパラさえなければ、こんなことにはならなかった」。A医師は為政者への怒りを込めて話を締めくくった。
~終わり~