東京電力・福島原発事故の発生から1か月が経つ。政府やマスコミの発表とはウラハラに事態は悪化の一途をたどるばかりだ。不安を覚えるのは日本国民ばかりではない。放射性物質を含んだ汚水の海洋投棄は国際社会からの批判を浴びた。
「原発はエコでクリーン」と民放テレビは国民の頭に刷り込んできた。文科省は同じ趣旨のポスターコンクールを開き、小学生に描かせた。国を挙げての原発推進だったのである。
事故処理は進まないばかりか再臨界の懸念さえ指摘されている。環境汚染も留まるところを知らない。
図らずも見えたのは、大半の国民がこれまで正しいと信じていたものがウソだったことだ。政府発表と新聞・テレビ報道には多くの国民が疑念を抱くようになった。騙されてきたことに気づき、怒りへと変わった。
その表れが「反原発デモ」だ。これまで原発に関心がなかったり、あっても行動をおこさなかった普通の人たちがデモに参加し「原発止めろ」と声を挙げ始めたのである。
10日、東京都心や高円寺はじめ札幌、富山などで市民が「原発反対デモ」を繰り広げた。東京都心でデモを行ったのは中部電力の浜岡原発に反対する市民たちだ。活断層の上に乗り福島原発以上に危険であることを政府にアピールするためだ。
デモ隊は中部電力・東京支社の前を通るコースを選んだ。同支社は日本報道界の殿堂である日本プレスセンターに入居する。
電力会社がプレスセンターに入居していても違法ではない。だが電力会社はひとたび事故が発生すれば想像を絶する惨禍をもたらす原発を運転する独占企業なのである。ジャーナリズムは電力会社の安全管理などを厳しくチェックしなければならない。
その二つが同じ屋根の下に住む。記者クラブを通じた電力会社と報道機関の「なあなあ体質」が今回の大事故につながったと言っても過言ではない。喩えがあまり良くないが、暴力団と同じビルに入居する警察を信用することができるだろうか。
「政府とマスコミはウソをつくな~」。日曜日の東京都心に市民のシュプレヒコールが響いた。
◇
田中龍作の取材活動は読者の皆様によって支えられています。