東京電力・柏崎刈羽原子力発電所。7基の原子炉すべてを稼働すると821・2万kwを発電する世界最大の原子力発電所だ。原子炉とタービンは3分の2が地下に潜る。それでも、原子炉とタービンを覆う建屋は巨大なビル群だ。原発の怪物ぶりに改めて驚かされる。
巨大な原子力発電所は同時に巨大な秘密の塊でもあった。11日、同原発の災害訓練を取材した。地元記者クラブ以外は筆者とフリーカメラマン(2人)の3人だけだった。
正門前のサービスセンターから迎えのバスに乗ると広報担当者から諸注意があった。「指定された場所以外では撮影しないでください。バスの中からの流し撮りもできません。守ってもらえない場合は退所して頂きます」。
訓練は福島原発のように過酷事故が発生した場合を想定したものだった(はずだった)。
訓練用の集中制御室に案内された。電源喪失した際の訓練が行われていた。一瞬、電灯が消えて真っ暗になるが、すぐに非常用電灯がともり制御室は仄明るくなった。
東電の報道担当者は「非常用電源に切り替わりました」と説明した。
「福島の場合は非常用電源も落ちたんですよねえ?」と筆者が向けたが、報道担当者からは「ええ」としか言葉が返ってこなかった。“東電には過酷事故の認識はあるのだろうか?” 首を傾げざるを得なかった。
集中制御室の雰囲気を撮影するために、計器をアップサイズで撮ろうとした。途端に「写さないで下さい」と報道担当者が鋭い声が浴びせてきた。計器は訓練用であるのにもかかわらず、だ。
原子炉建屋の遠景撮影が許可された。報道担当者の目が光った―「今(建屋入口の)扉が(フレームに)入ってましたね」。
カメラのリプレイ画面を見ると扉がかすかに映っている。「使いませんから」と筆者。
報道担当者は「削除して下さい」と容赦なかった。
軍事施設ならともかく発電所は民生用施設である。テロを警戒して写真を撮らせないのは理解できる。だが、そこまで危険な民生用施設を作る必要があるのだろうか。
柏崎刈羽原発のわずか数百メートル沖では海上保安庁の巡視船が警備にあたっていた。24時間体制だという。
~つづく~
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田中龍作の取材は読者に支えられています。