デモ隊が築いたバリケードに向かって、機動隊は情け容赦なくビーンバッグ弾や催涙弾を撃ち込んでくる。「ドーン」。ビーンバッグ弾が重低音と共にバリケードに命中した。
機動隊に最も近い場所であるため、逮捕される確率も高い。バリケードは地獄と隣合わせだ。
最前線に立つプロテスターたちに歳を聞くと幼いことに驚く。15歳、16歳はザラである。
14歳の女の子が木製のバリケードを支えていたこともあった。機動隊に向かってゴム銃を引いていたのは15歳の少年だった。
逮捕者の最年少は12歳。反政府デモの始まった6月からの逮捕者は1千人を超えるが、このうち18歳以下の少年は約100人。逮捕者の1割を占める。(警察発表、9日まで)
近代的な装備で武装する機動隊に対して、デモ隊は雨傘と木製バリケードを楯に、ゴム銃で立ち向かう。催涙弾をつかんで投げ返す。
周囲の景色が違うだけで、パレスチナのウエストバンクやガザ地区で見た光景と同じだ。
「恐ろしいけど抗うしかない、今やらないと後がない」と話すのは17歳の男子だ。16歳の女子は「恐ろしいからこそ ここに立っている」。
中国共産党批判の書籍を販売していた書店の店主が大陸に連行される事件があった。2015年のことである。
「逃亡犯条例」はこうした連行を当たり前のものにしようという法令だ。林鄭行政長官は条例の(不完全)撤回を表明したが、デモは一向に収まらない。ばかりかエスカレートする一方である。
力と恐怖で押さえつけてくる警察行政に象徴されるように中国化は進む一方だ。
いま立ち上がらなければ、「香港の自由」はなくなる・・・若者たちの共通認識である。
17歳の少年は「デモ隊が負けると香港が消えてしまう」と危機感を露わにした。
「HongKong is not China. We are not China」 老いも若きも、男も女も合言葉のように叫ぶ。
一つが欠けても譲らないとする「五大訴求」のうち二つは中国が飲みっこない条件だ。
二つとは「警察の暴力(黒社会との関わりを含む)についての独立調査委の設置」「普通選挙の実施」である。これらを認めてしまえば、中国共産党が中国共産党でなくなる。
世界を揺るがす香港のデモは、対中国抵抗運動なのである。
パレスチナの民が、イスラエルの占領と戦うのと何ら変わりはない。
17歳の女の子は「デモ隊は負けないと信じている」。真っ直ぐな視線でこちらを見つめながら言った。
~終わり~
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警察に逮捕されても、撃たれて失明しても、香港の自由を守るために大中国と闘う少年少女を取材するために、現地まで足を運びました。
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