銀行口座の金の動きや元秘書の供述など捜査機関でしか知りえない“事実”が連日、新聞やテレビを賑わす。検察によるクラブメディアへのリークは、小沢・民主党幹事長の資金団体による土地購入事件でも活発だ。
「リーク情報の垂れ流し」「地検のお先棒担ぎ」……。ジャーナリズムの姿勢が問われるような批判を浴びながらも、メディアは大量のリーク情報を撒き散らす。
特捜部の捜査対象は国会議員や大物財界人などだ。権勢を極める人物が奈落に落ちる可能性もあるだけに、扱いが大きくなるのは当然だ。取材・執筆する記者も紙面を組むデスクも力が入る。同業他社との報道合戦も熱さを増す。報道機関であれば、リークであろうが何であろがノドから手が出るほど欲しい。
そこには「検察信仰」のようなものさえ生まれる土壌がありはしないだろうか。記者として揉まれてきた環境も影を落とす。
3大紙の朝・毎・読とNHKの記者は、例外なく地方支局を経験する。
最初の2~3年間は事件担当となる。よそ者に警察は冷たい。デカ(刑事)は返事もしてくれないし、広報担当の副署長は発表文に書いている事実以上のことはしゃべらない。
その点地元紙の記者たちは恵まれている。親戚や高校の先輩、ご近所に警察幹部がいたりするからだ。電話一本で本来秘密のはずの捜査情報を聞き出せたりする。
赴任当初、3大紙とNHKは苦戦する。地方紙に抜かれることはしょっちゅうだ。だからと言って抜かれ放しでは将来がなくなる。そこで取材源として開拓するのが検察だ。検事たちも、同じくよそ者だからそれとなく波長が合う。
汚職であろうが殺人事件であろうが、警察は誤認逮捕は許されない。警察は検察に相談する。ここがチャンスだ。検事に信頼されていて、こちらから当てれば「明日行く(逮捕する)みたいだな」と教えてくれる。
ギブ・アンド・テークは世の習い。検事は自分たちが調べると公権力の行使として問題となるような案件は、記者に頼んで調べてもらったりする。3大紙・NHK記者と検事は、利用し合うようになる。こうして検事と記者は「ある種の同盟」関係になる(筆者はそれを良としているわけではない)。
公務員法違反のリークがまかり通り、クラブメディアといえども記者会見にカメラを入れさせない検察庁。前近代的で不思議な世界だ。
権力批判を装いながらも、社屋の土地はちゃっかり国有地の払い下げを受ける。言論の自由を声高に謳いながら新聞社がテレビ局を所有し情報を独占する。先進国では例がない異常なメディア支配だ。いびつな検察報道は、日本マスコミの不明朗で不健全な体質に由来する。
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