「TPP大筋合意へ」。5日、どの全国紙の朝刊を見ても、1面にこのタイトルが躍っていた。
合意内容は内閣官房のHPにも、ほぼ同時にあがった。
米国も含めて各国は交渉を続けている最中だった。「日本はどうなっているんだ?」ジャーナリストも含めて各国関係者から不信の声があがった。
―TPP交渉が始まった3年前から交渉会場に足を運び情報収集を続けてきたPARC(NPO法人アジア太平洋資料センター)の内田聖子さんがそう伝えた。
同行の記者団の一人は「甘利大臣のフライング」と内田さんに明かしたそうだ。
フライングは現地時間の4日午前のことだ。
交渉参加12カ国閣僚が揃って記者会見をしたのは、現地時間5日午前9時30分(日本時間=同日午後10時30分)だった。
甘利大臣の半日早いフライングである。マスコミへのリーク通りになれば、単なるフライングで済まされるが、リーク通りとはならない可能性は多分にある。第一、米議会で批准されるのか。
『とにかく合意したということにしてしまえば、こっちのもの』。官邸のそんな意図が透けて見える。記者クラブを使えばいくらでも情報操作できるからだ。
内田さんによれば、(アトランタでも)マスコミは甘利大臣にぶら下がって黙々と聞いていただけだった。
与党は参院選挙に向けたTPP関連の予算をつけ各業界にばら撒く。そのためにも秋の臨時国会は開かない方針だ。
5日朝刊「TPP大筋合意へ」、6日朝刊「合意」で書かせ、甘利大臣は7日の組閣までに帰国する ― 既定路線だったのだ。
安倍首相は「(TPPの)中心に日本が参加する。TPPは国家百年の計」とするコメントを発表した。
官邸とマスコミが大合唱をする時、国民には災厄が降りかかってくる。「参院のねじれ解消」「郵政民営化」…私たちにもたらされた悲劇を忘れてはならない。
~終わり~