憲法改正の国民投票を1年半後に見据え、とうとう自民党が動き出した。
きょう、党をあげての憲法改正を訴える本格的な街頭演説会を行なったのである。
会場の有楽町・イトシア広場の一角には30名ほどの若い男女が紙袋を持ってスタンバイしていた。
彼らは自民党が制作した憲法改正マンガ「ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?」の配布部隊だ。
「選挙では抑止力として公明党に入れる」という群馬県の男性(70代)は、「外国の脅威を感じるので戦争ができる体制にするのは防護策としてはいいが、仲間と言える国が戦争を始めた場合いやだと言えなくなる。皆兵制(徴兵制)につながる」と懸念をあらわにした。
街宣車には、磯崎陽輔・憲法改正推進本部事務局長、船田元・憲法改正推進本部長、木原稔・青年局長、三原じゅん子・女性局長などが並んだ。
船田元・憲法改正推進本部長は、「憲法解釈を柔軟にしてきたが、解釈には限度がある。いわゆる解釈改憲になり、国民に信頼がなくなる。憲法改正によってむしろ信頼が増すのではないか」と訴えた。
トリは党三役の谷垣禎一幹事長だ。谷垣氏は「道筋も少しづつ出来上がっている」と胸を張りつつ、「国民の理解できるところをていねいに説明していく」とした。
司会のふくだ峰之・遊説局長は「政治家はあくまでも発議しかできず、決めるのは国民です」と締めくくった。
ある自民党議員支持者ツアーの一環で演説会に来た女性は、終戦時9歳だった。「とにかく戦争だけはだめ。友だちのお父さんが亡くなって食べるものもなくて大変だった。今の若い人たちは天国ですよ」と心配そうに聞き入っていた。
聴衆の中には「ヤメロー」と叫ぶ男性もいた。女性の叫び声も聞こえた。没収されることを恐れたのか、演説会が終了してから「戦争させない」と書かれたプラカードを掲げた初老の男性もいた。
男性が他社のインタビューを受ける間、筆者が脇で待っていると「どうして私たちには聞かないんですか?」と若い女性らに割って入られた。
反対意見だけを聞いているように見えて納得いかなかったようだ。彼女らは熱心な改憲派だ。
旭日旗のアイパッド・ケースをつけた30代の女性は、友人らと仕事帰りに立ち寄ったという。自民党支持者だ。
憲法改正で具体的に思うところがあるか聞くと、みな異口同音に「(現行憲法は)日本語がおかしい。テニヲハがおかしい」。
さらに「9条を停止してもらいたい。1項として戦争反対しているのに、2項は武力を持たないという。戦争を放棄するためには国を守る力が必要だ」という。
彼女らはフェイスブックで情報をやりとりし、演説会などに行くという。
熱心な若い支持層はともかく、戦争を経験した高齢者は自民・公明支持層でも一枚岩ではない。
危ぶむ国民をなだめたりすかしたり、女性にアピールしたり、国民主権を持ち出したり・・・自民党はあの手この手で憲法改正を飲ませようとしている。
マンガも演説も、まだほんの手始めにすぎない。
《文・写真 中山栄子》
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