政権を批判したコメンテーターが番組を降ろされ、テレビ局が自民党から事情聴取を受ける。報道に対する権力の介入は露骨になってきた。
危機感を募らせた言論人やジャーナリストがきょう、都内で討論集会を開いた。出席したのは、2月、翼賛体制に抗議する声明に署名した約100人だ。
「今ここで物言わなかったらどうする」。NHKチーフプロデューサーの飯田能生氏は決意を胸に出席、発言した―
「(物言わなかったら)会社をクビになるよりももっと怖いことになる。そう思って署名した。それくらい危機的な状況だ」。
声明には2,500人が署名したが、企業(新聞社、テレビ局など)に所属するジャーナリストはわずか15人だった。
テレビ朝日にかけられた官邸の圧力を暴露し、大きな一石を投じた古賀茂明氏も出席した。
古賀氏は16日、日本外国特派員協会での記者会見の後、マスコミの囲み取材を受けた。
「古賀さんが打ち合わせにないことを話したから政治権力の介入を招いた」と古賀氏を責めたてる記者もいた。
メディアは告発者を守らなければならない立場にある。ところが権力のお先棒を担いで告発者を責めているのだ。政権べったりのメディアは、いずれ国民の言論の自由を締め付ける側に回るだろう。
古賀氏によれば、これを聞いていた海外の記者は「ヒドイね、日本のマスディアは」と顔をしかめたそうだ。
法政大学の山口二郎教授(政治学)は言論を取り巻く現状を憂う―
「戦後70年の今年は天皇機関説事件(※)から80年になる。学問が弾圧されて国家が滅びるまで10年とかからなかった」。
言論への介入を巧妙かつ強権的に進める安倍政権。勢いは加速度を増す。マスメディアはそれをはね退けるどころか、すり寄るありさまだ。10年と待たずとも国家が滅びかねない。
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※天皇機関説
美濃部達吉・帝大教授が唱えた憲法学説で国家の統治権は法人たる国家にあり、天皇は最高機関とする。天皇に統治権がある天皇主権説と対立した。
大正時代から昭和初期にかけての通説だったが、軍部が台頭した昭和10年に貴族院で天皇機関説が国体に反するとする攻撃が始まると、美濃部の著書は発禁になる。美濃部は右翼に襲撃された。
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