NHKとテレビ朝日幹部がきょう、自民党の情報通信戦略調査会から事情聴取を受けた。
NHKの堂元光副会長とテレビ朝日の福田俊男副会長は、事情聴取の始まる午前11時直前に、永田町の自民党本部に吸い込まれて行った。
テレビ朝日は、看板ニュース番組『報道ステーション』でコメンテーターの古賀茂明氏が生放送中に「官邸からの圧力があった」と暴露したことから、安倍政権の機嫌を損ねた。
NHKが呼ばれた表向きの理由は「クローズアップ現代」のやらせ疑惑だ。テレビ業界で日常茶飯事にある やらせ は自民党の眼中にない。
NHK関係者によると、政治部記者出身の堂元副会長は、腹芸のできるしたたかな人物で次期会長の呼び声が高い。
「次期会長」を呼びつけたことで、自民党はNHKに対して影響力をあらためて誇示したのである。
NHK内で風速を増す「籾井降ろし」を安倍首相は快く思っていない。反籾井勢力に対しては「静かにしろよ」という暗目の脅しにもなる。
放送局幹部が個別の案件で政権党に呼ばれることは頻繁にある。それが今回に限ってマスコミにリークされた。さらし首である。
他のテレビ局にも十分な威嚇だ。安倍官邸の意向に従わなかったらこうなるという恫喝である。
今回、フリーランスやインディペンデントメディアは自民党本部の敷地に一歩たりとも足を踏み入れることはできなかった。
筆者は「廊下までで構いませんから入れさせて下さい」と懇願したが、自民党の事務方は「きょうは平河クラブ(自民党の記者クラブ)のみとなっている」の一点張りだった。
マスコミ記者の情報を総合すると、事情聴取のもようはこうだ―
冒頭のみマスコミのカメラ撮影が許可された。聴取している間、マスコミの記者は入れなかった。
約一時間の聴取が終わった後、「平河クラブ」のみ、自民党のブリーフィングを受けた。ブリーフィング内容は、「平河クラブ」の記者しか知らない。
フリーランスや週刊誌などを排除して、記者クラブは自分たちだけが特権を謳歌しているつもりだろうが、浅はかという他ない。
「排他的な特権」は権力の庇護があって初めて可能になる。権力に庇護されているということは、権力の機嫌を損ねればいつでも潰されるということである。
政権党があからさまにメディアに対して威力を見せつけた。にもかかわらず、記者クラブは権力に庇護されているという自覚もなく特権に安住する。報道の自由の自殺行為にも等しい。
いずれ他社もテレビ朝日やNHKのように さらし首 にされる日が来るだろう。
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