徴兵を拒否しフランスに亡命した韓国人青年が、雨宮処凛氏(作家)の招きで来日し、きょう、日本外国特派員協会で記者会見した。
戦争に突き進む安倍内閣がこのまま続けば、対岸の火事では済まされない。
青年はイ・イェダ氏(22歳)。イ氏は自己紹介をかねて次のように話した―
2012年7月、20歳の時、徴兵がいやで亡命を決意し、6万円だけ持って片道切符でフランスへ発ち、13年6月に難民認定された。現在はパリでパン職人をしている。
徴兵制度(反対)だけを理由に難民認定されたのは自分が初めてだ。
韓国では良心的兵役拒否は認められない。代替服務制度(※)もない。拒否すると1年半の懲役で、兵役に行っていなければ就職も難しく、社会的死を意味する。
韓国では2000年頃から徴兵拒否者が増えた。イラク戦争に韓国軍が派遣されたことが背景にある。軍隊内のいじめのため、自殺したり事件を起こす者が多い。世界の良心的徴兵拒否者は970人で、韓国が約800人と9割を占める。
家族は韓国にいる。自分は韓国に入国すればすぐ収監される。亡命のような極端な手段を取ることがないように、韓国政府に求めたい。
日本では7月に「集団的自衛権の行使」を容認する閣議決定が行われ、日本の若者が徴兵制にリアリティを持つようになったと聞いている。自分の経験が日本の人々に参考になればいいと思う。
雨宮処凛さんはイ氏を呼んだ理由を語った―
日本の集団的自衛権、軍隊、徴兵制の問題を考えたくて来てもらった。徴兵制や戦争にリアリティのない日本の若者と交流してほしい。
続いて記者団との質疑応答に移った―
記者:日本の若者に何をいちばん訴えたいか?徴兵制ができる前に反対すべきか?代替服務制度があれば問題ないか?自身は代替服務制度についてどう思うか?
イ氏:徴兵制になる前に確実に反対するべきだと思う。もし(徴兵制導入を阻止できなければ)、国民が(軍隊を)監視できる法律を作るべきだと思う。
代替的服務制度でさえ、私は服しません。代替制度があったとしても政府の命令に従うことに代わりはない。私は韓国政府が好きではないので代替服務制度も認められない。軍隊というシステム自体に反対だ。
記者:亡命したことを後悔していないか?
イ氏:まったく後悔していない。悪い結果が出ることも考えていたが、プライドを持って生きたかった。山に入る(逃げる)ことも考えていた。
~ ~ ~
昔話の類に入るが、タカ派色の濃い中曽根康弘首相が内閣を率いていた頃(1982~87年)、徴兵制の復活を危ぶむ声が一部にあった。
当時高校生だった従弟に「軍隊に引っ張られたらどうするか?」と聞いた。彼は「山に逃げる」と答えた。
従弟はその後、高校の社会科教師となった。授業で平和の尊さを説いているのかは、知る由もない。
◇
※代替服務(役務)制度
徴兵制のある国で兵役を拒否する代わりに福祉や公共サービスに従事すること。