世界中の気を揉ませながらガザ停戦交渉が断続的に続く。
交渉のネックはエジプト国境ラファでのイスラエル軍駐留だ。
イスラエル側の本音は全面駐留である。それでは交渉が進まないので「一部撤退」となった。ネタニヤフもこれを飲んでいるようだ。
だがハマスは全面撤退を掲げて譲らない。
ラファがハマスはもとよりガザの人々にとって生命線だからである。
ガザは第3次中東戦争(1967年)でイスラエルがエジプトから分捕った地であるため(エジプトもそれほど執着していなかったようだが)、国境線が人工的になった。
結果、エジプト側とガザ側にラファは分断された。言い方を変えれば双方にラファがある。
ハッサン一族が、イスマイル一族が、ムスタファ一族がエジプト側にもガザ側にもいるのだ。
ガザ側の一族が困窮すれば、エジプト側の一族はトンネルを通して物資を送る。生活必需品が中心だが、武器弾薬も混じる。
トンネルさえなければ、イスラエルはガザ南部のケレームシャローム検問所で、ガザに搬入される物品を100円ライター1個に至るまでチェックできる。
2009年頃まではトンネルは大小合わせて1800にものぼった。イスラエル軍がしきりと空爆をかけたが壊滅できなかった。
ハマスを嫌うエジプトのシーシ大統領がトンネルを潰させたとの情報もあった。音波探知機で探ったとまで言われた。
だがトンネルは残った。イスラエルが神経を尖らせる理由である。
パレスチナとエジプトの双方にまたがるラファはデリケートな地域なのだ。アフガニスタンとパキスタンにまたがる(行政区分はパキスタン)トライバルエリア(部族地帯)にも似ている。
米国傀儡のムシャラフ軍事政権といえども、トライバルエリアには手を出せなかった。
米国にカブールを追われたタリバンだったが、トライバルエリアで体力を回復し、首都カブールを奪還した。
エジプトにラファがある限り、トンネルはあり続ける。ハマスの命脈は尽きない。
~終わり~
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