花博のための道路拡幅工事に伴い伐採の危機に晒されている上瀬谷の桜が心配になり、田中は現地に足を運んだ。
拡幅工事中にバイパスとなるルート上に樹齢50年(推定)の一本桜といわれる名木があり、《切られるのではないか》と気を揉むツイートが散見された。
地元住民が15日、横浜市上瀬谷整備推進課に電話を入れて問い合わせたところ「今回の工事では伐採も撤去もせず(現地に)残す」という答えが返ってきた。
「切る」などと答えると住民の反発を招くので行政は上手にウソをつく。
行政の手のうちを知る田中は、上瀬谷に着くと真っ先に一本桜の安否を確かめに行った。
現場作業員に「これ残すんですか?切るんですか?」と聞くと「移植するよ」と何喰わぬ顔で答えた。「移植の時期と移植先はまだ分からない」という。
「(現地に)残す」という役人の回答はウソだったのである。
日比谷公園でも作業員は変な打算をまじえずに正直に答えてくれた。第2花壇前のクスノキなど10本余りの移植は、彼らの言った通りになっている。
横浜市の役人は問い合わせた住民にこうも答えている。
「幹に穴が空いているので樹木医と相談して移植も検討する」と。
これも全くのウソだった。田中は一本桜の写真を日本庭園協会の重鎮に送った。
「年を取ると穴が空いたりするのは当たり前。樹皮が古くなっているだけで、木はりっぱに生きている。どうってことない」という答えだった。
木を切りたくてたまらない行政が「樹木医」を持ち出してきた時は要注意である。切る時のエクスキューズなのである。
一本桜を見て、横浜市に木を大切にする精神がひとかけらもないことが、手に取るように分かった。
木の根が露出しているのだ。移植前の根回しにしてはお粗末である。根回しは根が露出しないように土で大きな鉢を作る。
木の根を外に出すと、根が養分を吸い上げることができなくなり、木が死ぬからだ。
横浜市の作業を見ていると一本桜に「死ね」と言わんばかりだ。
市民とジャーナリストで、一本桜が死なないように注意深く見守っていく必要がある。
~終わり~
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昨年末から借金が続いております。赤字に次ぐ赤字です。