東京のド真ん中に120年の森がある。無料で誰でも利用できる。都立日比谷公園のことだ。
鬱蒼とした日比谷の森が、三井不動産などによる内幸町の再開発のために伐採・移植されることが分かった。
日比谷公園を管轄する東京都東部公園緑地事務所が「日比谷公園の歴史と文化をこよなく愛する会」に口頭で説明する過程で明らかになった。説明はきょう16日、上野の同事務所であった。
東京都は100億円を超すとみられる巨費を投じて約10年がかりで日比谷公園の大規模改修工事を行う。2033年完成予定。
第2花壇と呼ばれる広場、シンボルである大噴水や小音楽堂などの改修をはじめとする全面リニューアルである。都民が頼みもしないのに、だ。
大規模工事のためには資機材を積んだ工事用車両が公園の中まで入らなければならない。
公園緑地事務所の説明を聞いて腰を抜かした。「祝田通りから工事用車両の導線を確保する」というのだ。
祝田通りから公園の中心方向は樹木密度が最も高いエリアである(地図参照)。車両を通すには相当な本数の古木巨木を伐採・移植しなければならなくなる。
伐採・移植本数については「まだ設計が済んでいないから」との理由で明らかにしなかった。
仮に都が言うように移植するとしても公園内にはもうスペースがない。アスファルトの通路を広げたり、芝生広場を新設したりするため、樹木のスペースは現在よりも相当に狭くなるのだ。
イスの数を少なくされるなかでイス取りゲームをするのに等しい。
公園事務所は工事車両の導線を日比谷通りからとしないのは「デッキの取り付け工事があるから」と説明した。
デッキとは三井不動産が手掛けた「東京ミッドタウン日比谷」などから日比谷公園に向けて架かる橋のことだ。
日比谷通りを跨いでデッキは日比谷公園に着地する。デッキにはエレベーターも設置される。本格的な工事となるので、日比谷通り側はデッキ工事優先となるのだ。
「そこ除け、そこ除け、三井不動産が通る」と言っても過言ではない。
通路を広げたり芝生広場を設けたりするのは、日比谷公園をイベント中心の空間とするためである。デッキは日比谷ミッドタウンなどから客を送り込むために架けられる。
都民が「今のままでいい」と言っているのに、日比谷公園は三井不動産のために全面改修されるのである。
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本稿は「日比谷公園の歴史と文化をこよなく愛する会」のメンバーで日本庭園協会の高橋康夫相談役が田中に語り、田中は録音を確かめたうえで執筆した。
~終わり~
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《読者の皆様》
昨年末から借金が続いております。赤字に次ぐ赤字です。