選挙のたびに低投票率が話題になる。30%台なんて珍しくなくなった。20%台になる選挙さえある。選挙に行くのは100人に20人程度なのである。
日本人は香港の若者にとっての宝石をドブに捨てている。宝石とは普通選挙制度である。
日本では空気のようにある制度を、香港の若者は命がけで獲得しようとした。
2019年から2020年にかけての民主化運動である。中国政府は香港警察に人民解放軍を紛れ込ませてまでして弾圧を繰り広げた。
催涙弾に煙る街でデモ隊の救出にあたるボランティアがいた。デモに参加した学生たちを自宅や寮にまでマイカーで送り届けるのである。
電車を使えば駅で警察が手ぐすねを引いて待つ。バスだと車内にまで踏み込んでくる。
逮捕されずに帰路につけるボランティアのマイカーは「スクールバス」と呼ばれて学生たちに慕われていた。救いの神でもあった。
救出ボランティアは香港の現状を日本人ジャーナリストに知らせたいのか、田中に「スクールバスに乗ってくれ」と半ば強引に勧めた。
車内では学生たちと話が弾んだ。田中は学生たちに「最も強く求めているのは何か?」と尋ねた。
彼らは口々に「普通選挙」と答えるのだった。
日本の国会にあたる立法会の定数90議席の内、直接選挙で選ばれるのはわずか20議席。40議席は中国政府寄りの選管が選び、30議席は伝統的に中国政府寄りの職能団体が選ぶ。(BBCより)
民主化運動の弾圧後は、愛国者(親中国共産党)でないことには立候補さえできなくなった。
普通選挙や言論の自由のために若者たちは路上に出て戦った。逮捕、起訴され「国家安全法違反」で有罪になれば最高刑は終身刑である。
両親に宛てて遺書を書きデモに参加する学生も少なくなかった。
まさしく人生を投げうって普通選挙制度の獲得を目指したのだ。
民主化運動は、しかし、中国政府をあげての弾圧に敗れ、普通選挙制度の獲得は夢のようにはかなく消えた。
弾圧後は、中国政府に忠誠を誓わないことには立候補さえできなくなった。
香港の若者から見ればバチ当たりとしか思えない低投票率がもたらしたのは、日本政治の劣化だった。
選挙でカルトのお世話になった政権党は警察の取り締まりをけん制してきた。政権党の議員であれば巨額脱税をしても罪に問われない。下着泥棒が最大派閥の事務総長を務める。
自民党という反社勢力は捜査機関を掌握し新聞テレビを意のままに操る。憲法改正しなくてもやりたい放題である。
日本が民主主義国家に留まれるのかは次の総選挙にかかっている・・・と言っても過言ではない。結果しだいでは権力を握った犯罪集団が大手を振って歩く暗黒国家の幕開けとなる。
選挙は宝石なのだ。その輝きで日本が暗黒になるのを防げる。
~終わり~
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《読者の皆様》
パレスチナ→能登震災→柏崎原発→京都市長選挙と借金が続いております。赤字に次ぐ赤字です。