イスラエル軍がガザへの前線基地で30日、ブリーフィングを持った。
各国のジャーナリスト20人余りが出席した。有名どころでは米CBSなどの名前があった。
報道担当の将校(佐官)がガザ北部の最激戦地ベイトハヌーンをめぐる戦況を語った。
トンネルが150本見つかった、ハマスが武器弾薬を学校に隠し持っていた…旧聞に属する情報の説明だった。映像も見飽きたものばかりだった。
田中は「イスラエル軍はベイトハヌーンのハマス関連施設を完璧に破壊したのか?」と質問した。
将校は苦虫をかみつぶしたような顔でしばし田中を見つめた。「難しい質問だ」。
そして苦笑いを浮かべながら「完璧な破壊に近づきつつある」「完璧な破壊に近づきつつある」と繰り返すのだった。
軍人は政治家のような気持ちの悪いウソはつかない。まだまだハマスは戦闘継続能力があるのだ。
最南部のラファから入った救援物資が北部に搬送されるのを、イスラエル軍が嫌う理由をあらためて確認できた。
停戦中であっても空爆をかけて北部への搬送を遮断したこともあった。ハマスはこれを停戦違反であるとして反発し、人質の交換が遅れたこともあった。
北部ベイトハヌーンをめぐる攻防は、今回の戦争が終結するまで続くだろう。
ここでブリーフィング担当者が下士官に代わった。
ドイツの女性記者が「ジャーナリストがガザにアクセスできないのは報道の自由に反するのではないか」と質問した。
下士官の答えにはハマスへの認識がモロに表れていた。「ハマスは病院や学校に立て籠もる。世界各国のジャーナリストを危険な目に遭わせることはできない」。
さらに別の下士官に代わったところで田中は質問した。「2014年戦争の際は戦闘期間中ずっとガザで取材できたのに、どうして今回は入域を許可しないのか?」と。
司会役の女性兵士が助け舟を出した。「彼(広報担当の下士官)には権限がない」と。
今回のガザ戦争ではジャーナリスト70名が命を落としている(11月26日まで/パレスチナ・ジャーナリスト連盟まとめ)。
本腰を入れてガザ取材に就くジャーナリストで死ぬ覚悟ができていない者はいない。
それにしても今回イスラエル軍の壁は厚い。ジェノサイドを隠したいのだろうか。
~終わり~
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【読者の皆様】
最盛期より幾らか安くなったとはいえ、ドライバーへは危険手当も含めて1日600ドル(約9万円)も払わなければなりません。
ホテル代も入れると1日平均10万円を超えるコストになります。毎日取材に出るわけではありませんが、1ヵ月に換算すると途方もない金額になります。
イスラエル軍の銃口よりも借金に怯えながらの取材行です。
ガザに隠れがちですがヨルダン川西岸でも着々と民族浄化が進んでいます。
ジャーナリストがこの世の生き地獄を伝えなければ、エスニック・クレンジングは歴史上なかったことになります。