「ワグネル、モスクワに進撃」の報に昨夜は焦った。
政府軍が逃げずに応戦すればモスクワで市街戦となる。現場で伝えたい。東京―モスクワ便はいま果たして飛んでいるのか。ビザが要る。
エレバン(アルメニアの首都)―モスクワ間は一日何便も飛んでいる。友人の現地ジャーナリストが口八丁手八丁なので、ビザの取得を手伝ってもらおうなどと策をめぐらせていた。
それより何より取材費をどうやって調達するか。ありとあらゆる借金の方法を考えた。
今回の反乱劇で最も情報価値があったのは、戦場で陣頭指揮にあたっていたワグネル社創設者のプリゴジン氏の一言だった―
「プーチンが唱えるウクライナ東部の非ナチ化はウソだ」。
プーチンがドンバスに侵攻する際に掲げた「ネオナチによる虐殺からロシア系住民を守る」は、真っ赤なウソだったことを当事者が明らかにしたのである。
ロシアのドンバス侵攻は2014年から。ワグネル社は最初から関わっていたのである。プリゴジン氏はすべてを知る人物と言ってよい。
プーチン大統領がプリゴジン氏をベラルーシに亡命させることで、とりあえずモスクワ進撃は回避された。第1幕は降りたようだ。
独裁政権は無理に無理を重ねている。積み木の家である。脆い。いずれかのパーツが変調をきたせば簡単に崩れる。
独裁国家崩壊に向けていずれ第2幕が上がるだろう。追い詰められたプーチンが核の誘惑に駆られたりしないことを願うのみだ。
~終わり~
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