【キーウ発】愚かな戦争 旧日本軍とプーチンのロシア軍は重なる

地元住民によればロシア軍戦車(写真)は、撤退する3月30日にウクライナ軍の砲撃を受けた。=4月、ノババサニュ村 撮影:田中龍作=

 開戦から71日目、5月7日。

 キーウから東に91㎞、ロシア国境から西に314㎞のノババサニュ村。

 開戦から4日目の2月27日のことだった。修理中の橋を警備していたガードマンは腰を抜かすほど驚いた。

 ロシア軍の戦車や自走砲が轟轟と音を響かせながら目の前を通過していく。橋は壊れなかったが、最後尾が行き過ぎるのに6時間かかった。

 この時点でウクライナ軍は迎撃態勢に入っていないことが分かる。

 ウクライナ軍はロシア軍戦車をキーウ近くまで引き付けておいて迎撃したのである。露軍戦車の残骸がキーウに近くなるほど多いことでも明らかだ。

ロシア陸軍の食料袋にウクライナのヨーグルトが。民家に押し入って略奪したとしか考えようがない。=4月、ブチャ 撮影:田中龍作=

 ウクライナ軍が採ったのは「縦深陣地」という布陣だった。横一線に拡がってガードするのではなく、縦に深く矩形の陣地を敷いたのである。そこにロシア軍戦車を誘い込み次々と狙い撃ちして行った。 

 雪が融けて畑や林はぬかるみ始めており、ロシア軍の車両はアスファルト道路を通るしかなかった。余計に狙い撃ちされやすくなった。「縦深陣地」は大軍で攻めてくる相手を倒すのに適した戦法だ。

 キーウ近くまで引き付けられ、ロシア軍の兵站線は長くなった。兵站線は長くなるほど補給が困難になる。

 食料に事欠いた兵士たちが略奪に走るのは理の当然だった。

 南下してキーウを目指すロシア軍が略奪と殺戮を恣にしたペボダ村で老婆がロシア軍兵士に「何をしにウクライナに来たのか?」と尋ねた。

 二十歳になるかならないか位の若い兵士は「トレーニングと言われて来た」と答えたという

ほとんどダメージを受けていないロシア軍戦車。兵士はブーツを履き換えて遁走したのだろうか。=4月、キーウ郊外 撮影:田中龍作=

 傷ひとつないロシア軍戦車を時々見かける。ロシア兵は戦わずして投降したのだ。戦車を一両いくらで売って逃げたとする情報もある。

 戦跡からはロシアの兵隊さんたちに戦争を戦う士気がないことが伺える。愚かな戦争がここに集約されている。

 太平洋戦争で補給路を絶たれた旧日本軍は、外地で略奪を繰り広げた。現地の人々を殺して食料を奪ったりした。

 日本を戦争に駆り立てたのは米国であるとの説がある。史実上そうであったとしても、旧日本軍がアジアの各地で犯した殺戮と略奪の罪は消えるものではない。

 当時の日本軍とプーチンのロシア軍は重なる。

     ~終わり~

   ◇
皆様のお力で、田中龍作は日本の新聞テレビが報道しない、ウクライナの実情を、伝えることができています。

通訳もリスクにさらすため高額の人件費がかかります。カードをこすりまくっての現地取材です。 ↓

田中龍作の取材活動支援基金

■郵便局から振込みの場合

口座:ゆうちょ銀行
記号/10180 番号/62056751

■郵便振替口座

口座記号番号/00170‐0‐306911

■銀行から振込みの場合

口座:ゆうちょ銀行
店名/ゼロイチハチ・0一八(「ゆうちょ銀行」→「支店名」を読み出して『セ』を打って下さい)
店番/018 預金種目/普通預金 口座番号/6205675 口座名/『田中龍作の取材活動支援基金』

■ご足労をおかけしない為に

ゆうちょ銀行間で口座引き落としができます。一度窓口でお手続きして頂ければ、ATMに並んで頂く手間が省けます。印鑑と通帳をお持ち下さい。
記号/10180 番号/62056751 口座名/タナカリュウサクノシュザイカツドウシエンキキン

連絡先
tanakaryusaku@gmail.com
twitter.com/tanakaryusaku

ウクライナ