昭和の栄華を象徴する池袋サンシャインシティの裏手にひっそりとたたずむ東池袋中央公園。
毎月第2・第4土曜日、ここで食料・衣料の配布と医療・生活相談が行われる。(主催:NPO法人TENOHASI)
夜の帳が下り始めた公園に足を踏み入れた田中は驚いた。大蛇がくねったように人々は列を作っているのだ。午後6時ちょうど開始の食料配布を待っているのである。
一番乗りは60代の男性。常連だそうだ。会場設営のボランティアスタッフよりも早く来ているという。「僕たちが来るのは午後2時ですからね。その時はもういらっしゃってます」。男性スタッフは舌を巻く。
食料を求める列にひときわ若い男性がいた。30代という。水質調査会社にいたが3年数か月前に辞めた。
以来、貯蓄を取り崩しながらのネカフェ暮らしだった。そうこうしているうちに体を壊した。歩けないほどの腰痛に襲われ、自律神経系の病気にも見舞われた。貯蓄は尽きた。
ニッチもサッチも行かなくなっている時に東池袋中央公園の生活相談を知った。10月の最終週に福祉とつながることができた。今は生活保護を利用しながらの暮らしである。
スーツ姿の男性(60代)もいた。ジワジワと収入が減っていったのだろうか。それともいきなり収入が途絶えたのか。いずれにしろ生活が苦しいことだけは確かだ。
スタッフによると、用意する食料は回を追うごとに増えているそうだ。
きょう11日、用意していた450食(酢豚弁当、パン、フルーツ)はわずか35分ではけた。
「私もいずれ並ぶ側に入るのかなあ」。田中が一人ごちると、やさしそうな女性スタッフは「皆、そうです。安心感なんてありませんよ」と応じた。
国会を揺さぶっている文通費も大事な問題だが、食事にありつけない人々が増える一方であることに、政治は目を向けなければならない。
~終わり~