田中家になくてはならなかったスーパーの洋服売り場が、今月一杯でフロアーごと閉鎖される。
店員は閉鎖の理由を「コロナで売り上げが落ちたため」と説明した。閉鎖した後はテナントに貸し出すのだそうだ。
「イチキュッパ」と「サンキュッパ」の品々が主力だった。
ダウンジャケットと称する3,980円のジャンパーは、今なお田中のお気に入りだ。ちょっとした外出の際は、必ず着用する。
1,980円のシャツも有難かった。体臭が染みつくほど着倒した。幾度も幾度も洗濯したので繊維が細っている。
スーパーの裏手にある中古洋品店が人気だ。
105円からの品揃えが目を引く。ズボン、シャツ、果てはジャケットが、105円という低価格なのである。
525円の品になると素材が高級になる。ウール地だったりする。325円のスカートは綿だ。
重税と諸物価の高騰で庶民は生活防衛に走る。
マスコミは「財布のヒモが固くなる」という表現を使うが、現実は違う。財布の中には、わずかしかおカネが入っていないのだ。
今のペースで貧困が進むとスーパーから衣料品売り場が消え、「ジャケット99円」の中古品店が登場してもおかしくない。
~終わり~