【広島再選挙】「だまっとれん候補」に集まる聴衆

宮口候補の演説中に「だまっとれん」の選挙広告を貼った路面電車が通りかかった。市選管によると一部の電車にしか貼っていないという。=18日、広島市内 撮影:田中龍作=

 広島県選挙管理委員会が企画したという「だまっとれん」のフレーズに、田中は目を瞠った。

 保守王国の広島でよく自民党がこんなフレーズを許したな・・・と驚いたのである。

 選挙管理委員会は形式上、議会で選ばれるが、事務局は役所の中にあって、政治の影響を大きく受ける。

 自民党にとっては「だまっていてくれた方がいい」からだ。

 「(選挙に関心のない有権者は)寝てしまってくれればいい」と言い放ったのは森喜朗首相(当時)だった。

 前回(2019年)の参院選挙で1億5千万円を投じて大規模買収した自民党は、今回(25日投開票)の選挙で「有権者は寝ててくれ」そして「だまっていてくれ」と内心思っているのではないだろうか。

 それでも「だまっとれん」と声をあげたのが、野党統一候補の宮口はるこ氏だ。

 「小さな声を届ける代表になりたい。聞いているだけじゃダメなんです。国会議員になって討論してゆかなければいけない。投票に行かなかったら金権政治に手を貸してしまうことになる」。宮口氏はこう訴える。

 森元首相が聞いたら卒倒しそうなコメントだ。

西田候補(自民公認、公明推薦)の街頭演説。9割以上が動員だった。=18日、広島市内 撮影:田中龍作=

 自民党広島県連の岸田文雄会長は、きょう18日、地元の中国新聞に意見広告を出した。

 内容はお粗末。信頼回復と言いながら、前代未聞の大規模買収に対する反省の弁はない。コロナ禍の中で経済回復ができるのは自民党だけだ、と強気だ。

 コテコテの自民党支持者以外は反発するだろう。有権者の気持ちは離れるだけだ。それは街宣風景に現れている。

 動員で聴衆を集めるのは、自公お決まりのパターンだが、動員をかけていない野党統一候補よりも聴衆の数が少ないのだ。

 ただし街頭演説の聴衆がゼロ人でも、自民党は選挙に勝つ。組織力である。野党がこれを打ち負かすには、「浮動票」や「今度こそは自民党にお灸を据えようという層」を取り込む必要がある。

 「投票率が上がれば野党候補が当選する」・・・耳タコのフレーズが、今回は新鮮味と真実味を帯びる。

宮口候補(野党統一)の街頭演説に多くの道行く人が足を止めた。動員ではない。=18日、広島市内 撮影:田中龍作=

      ~終わり~

  ◇
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