政治犯引き渡し条例に反対する市民1万人超が警察本部を封鎖した21日、政府庁舎前で香港の今を象徴する事件が起きた。
政府庁舎と立法院の壁や鉄柵には、条例の完全撤回や政府批判のメッセージや風刺画が所狭しと貼られている。「蛇蝎林鄭」「NO EXTRADISION TO CHINA」・・・
この日の朝、政府庁舎のガードマンがこれらの貼り紙を剥がしているのを王鳳瑶さんが見つけた。王さん(63歳)は鬼の形相でガードマンに抗議し剥がすのを止めさせた。
王さんは朝から晩までほぼ一日中、貼り紙のメンテをしている。雨に濡れたりして剥がれ落ちそうになっているとヒモやテープで留め直すのだ。
王さんによれば、剥がされた貼り紙は6枚。「剥がした貼り紙を返してください」。王さんはゲートに座り込んだ。
政府の職員たちは王さんを排除しようとした。騒ぎを聞きつけた人々やメディアが駆け付けたため王さんは排除されずに済んだ。
だが剥がされた貼り紙は戻ってこない。ガードマンが自分の意志で貼り紙を剥がしたとは思えない。言論の自由が公権力によって奪われたのである。
音楽関係の仕事で12年間ウィーンで暮らした経験のある王さんは西欧の民主主義を謳歌した。「返還前は良かった」が口癖の王さんは片時も英国国旗を手放さない。
王さんに「引き渡し条例が成立すると、この香港で表現の自由はどうなると思いますか」と尋ねた。
「香港の独立が損なわれた時、香港は香港でなくなる」。王さんは険しい表情で答えた。
翻って日本はどうだろうか?
森友問題の真相を暴露した著述家のアカウントが執拗に凍結される。シリアに行った、あるいは行こうとしたフリージャーナリストのパスポートは再発給されない。
いずれも基本的人権の侵害以外の何ものでもない。
香港の引き渡し条例には前段があった。選挙制度が中国の都合のいいように変えられたのである。
日本ではかろうじて普通選挙制度が維持されている。まだ間に合う。
~終わり~
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暴政はデモで止められることを香港の人々が教えてくれました。香港の人々から学んだことは、拙稿を通じて読者の皆様に還元していく所存です。
ただ、多大な取材費を要したため、『田中龍作ジャーナル』の財政が非常に危うくなっております。皆様のご支援で倒産からお救い下さい。どうか『田中龍作ジャーナル』を存続させて下さい…
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