知り合いの検事が容疑者に「お前、(公判になって)自供を変えたりするんじゃねえぞ」と凄む場面に出くわしたことがある。
叩けばいくらでもホコリが出るヤクザ者との司法取引だった。本件で認めれば、すでに起訴済みの別件は目をつぶってやる、ということだった。
前美濃加茂市長を売った詐欺師もこうして自供したのだろう。詐欺師は、美濃加茂市長に「ワイロを渡した」とウソの自供をすることで、自分の罪を軽くしてもらった、とされる。
「検察は警察の下請け」は、事件に詳しいジャーナリストの間で定説化しつつあるが、その通りだ。
別の検事がこぼしていた。「筋の悪い(公判維持が難しい)事件で引き受けたくなくても、県警の本部長からウチの検事正に電話がかかってくる。本部長から頼まれると、検事正は断れない。それで俺の所に回ってくるんや」。
県警本部長は本庁人事のキャリアだ。警察庁と法務省の力の差を思い知らされる話だった。「司法の闇」の入り口は警察である。
朝日新聞の記者が死刑執行について法務省に情報公開請求したところ、ほとんどが黒塗りで出てきた、という。
記事(30日付)によると今年、死刑執行された4人のうち3人は再審請求中だった。3人は問答無用で国家によって殺されたことになる。
再審請求中の死刑執行は17年ぶり。なぜこうまでも「殺し急ぐ」のか。再審で新証拠が出てきて被告が無罪になったりすると捜査当局に不都合だからではないのか。
冤罪事件に詳しいジャーナリストの寺澤有氏は「再審請求中の死刑執行は究極の証拠隠滅」と指摘する。「財務省の書類破棄なんて可愛いものですよ」と言う。
安倍官邸の中枢を警察官僚が占めていることと無関係ではないだろう。「問答無用」は安倍首相の体質でもある。
警察と検察は被疑者を叩きまくって供述を作りあげる。裁判所は供述調書偏重で、検察の追認機関に過ぎない。これは常識となっている。
逮捕された時点で有罪が決まっているのだ。でなければ99・8%の有罪率なんぞありえない。
勾留理由開示裁判を傍聴すると、裁判所は検察の言いなりであることが、手に取るように分かる。裁判官は検察調書を棒読みしているだけだ。弁護士がいくら質問しても、勾留理由について答えないのである。
デッチ上げであろうとも逮捕されたらお終い。警察にニラまれたら、絞首台に直行なのである。
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※袴田事件
元プロボクサーの袴田巌・元死刑囚(78歳)は1966年、静岡県で起きた放火・殺人事件で逮捕され、1980年に最高裁で死刑が確定した。裁判は物証に乏しく、検察側は自白に頼った。自白調書45通のうち44通が却下された。自白の任意性が疑われたのである。にもかかわらず有罪が確定する。典型的な冤罪のケースだった。
弁護団は2度に渡り再審請求した。DNA鑑定の結果、現場に残された衣類に付着していた血痕が袴田さんのものでないことが判明。2014年、静岡地裁は再審開始と刑の執行停止を決定した。
〜終わり~