シリアへの渡航を計画したために外務省からパスポートを没収されたフリーカメラマンが、国を相手取り、没収の取り消しと渡航制限の解除を求めた裁判が始まった。
第1回口頭弁論がきょう、東京地裁で開かれた。原告は新潟在住のフリーカメラマン杉本祐一さん。
事件はこうだ―
杉本さんは今年2月、地元紙などにシリアへの渡航計画があることを明らかにした。
新聞報道で知った外務省の職員が新潟県警の刑事を伴い杉本さん宅を訪れ、パスポートの返納を迫った。
同行の刑事が逮捕をほのめかしたこともあり、杉本さんはやむなくパスポートを返納した。2月7日のことだ。
訴えによると「(杉本さんが行こうとしていた地域はISの支配地域ではなく)身体や生命に危険がないことから、返納命令を出す要件(旅券法19条)はない」。
パスポートの没収は移動の自由(憲法22条)、「表現の自由」(同21条)にも抵触する。
被告・国の答弁が笑止だ ―
「渡航を早める恐れがあった。知人宅に身を潜める恐れがあった」などとして「緊急にパスポートを没収する必要があった」としている。
パスポートを没収されたのが2月7日。出発は27日。3週間後なのである。緊急性なんて みじん もない。
原告の杉本さんは「出発まで3週間あったのだから聴聞だってできたはず」としている。
パスポート没収は官邸の意向を汲んだものだったことも明らかになっている。
「これは僕だけの問題ではない。(国民の)知る権利にも関わる。全ジャーナリストの問題でもある」。杉本さんは裁判で徹底的に争う姿勢を示した。
~終わり~