『日本のいちばん長い日』(半藤一利著)。いまアベシンゾーに最も読ませたい本だ。読んでも理解できないだろうから、せめて映画でも観せたい。
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8月6日、広島に原爆が落ち、9日にはソ連が参戦、長崎に2発目の原爆が投下された。大日本帝国は逃げようのないところまで追い詰められたのである。
9日夜11時50分からポツダム宣言受諾をめぐる御前会議が開かれた。事ここに至っても、受諾賛成と反対は3対3の同数だ。
昭和天皇が腹からしぼり出すような声で言った。「これ以上国民を塗炭の苦しみに陥れ、文化を破壊し、世界人類の不幸を招くのは、私の欲していないところである」と。時計は(翌日の午前)2時30分を指していた。
御聖断により日本の降伏が決まったのである。歴史上経験したことのない苦闘がここから始まる。
降伏は「本土決戦」を唱えていた陸軍にとって屈辱的だった。阿南惟幾陸相が辞表を叩きつけるのではないかと案じる向きもあった。
陸相が辞任すれば内閣総辞職につながり、ポツダム宣言受諾の政府決定が無効となる。
だが鈴木貫太郎首相は、阿南陸相が辞任しないことを見抜いていた。阿南も士官学校同期の安井藤治国務相に「俺は辞職なんかせんよ。最後の最後まで鈴木総理と事を共にしていく」と明かしていた。
鈴木貫太郎が昭和天皇の侍従長だった時、阿南惟幾は侍従武官長だ。天皇は阿南にことのほか信頼を寄せていた。
昭和20年4月、戦局が悪化を極めるなか、天皇は固辞する鈴木に総理就任を懇願する。その鈴木は阿南に陸軍大臣就任を迫る。
昭和天皇、鈴木首相、阿南陸相。3人の信頼関係が戦争を終結へと導くことになる。
陸軍中央は「御聖断下る」を聞いて驚愕する。若手将校らは怒り狂った。
阿南陸相が「不服な者はまず阿南を斬れ」と一喝するが、「神州不滅」を信じる若手将校は収まらない。
15日午前1時過ぎ、若手将校らは森赳近衛師団長を殺害、ニセの命令書を作成し、宮城(皇居)を占拠した。
反乱部隊は天皇が身を置く御文庫に向けて機関銃を掃射した。天皇に翻意を迫ろうとしたのである。だが東部軍に鎮圧される。午前6時過ぎだ。
部隊は「1億総決起」を訴えるためNHKに押し入った。だが、技術課員が放送局から放送所への回線を切断していたため、反乱将校の声は誰にも届かなかった。最後のあがきは終わった。
真っ赤な太陽が高く昇っていた。15日正午、玉音放送は無事日本全国に響いた。
ポツダム宣言を読んでいない首相に、日本が滅亡の淵に立たされるドラマは理解できないだろう。
独断専行で制御の効かない組織を揶揄する言葉に「昔陸軍、いま○○」というのがある。現在の状況は「昔陸軍、いま安倍政権」と言える。
戦後、天皇は人間となった。全権を掌握するアベシンゾーが開戦の御聖断を下さないことを祈るばかりだ。
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