映画『アラビアのロレンス』で、他民族の井戸水を飲んだ遊牧民が、持ち主から撃ち殺されるシーンがある。中東では水は命と同じくらいに貴重だ。ガザも同様である。
だが、文献至上主義者がまき散らす誤った情報が一人歩きしている―
「下水道がないため汚染された水が地下水に混入する。しかも海水が混じった地下水を飲む・・・」などなど。これらは事実ではない。
筆者がこの目で確認したことをリポートする。まず下水道はある。今回の戦争でイスラエル軍が下水処理場(写真下段)を爆撃した。汚染水が路上などに溢れていて異臭が鼻を突く。
UNICEF(※)プロジェクト・オフィサーのイマーム・アキール氏が爆破された下水処理場で説明してくれた。氏によると日量8万㎥もの汚水が海に流れている。
下水処理場とハマスと何の関係があるのか分からないが、イスラエル軍の爆撃は海洋汚染をもたらしている。
上水道は地下水を汲み上げていることは事実だが、あくまでも生活用水だ。塩分があり飲料水には適していない。トイレ、洗濯、シャワーなどに用いられる。
ガザ市はポンプで、ガザ市以外は給水塔で、各戸に水を送る。行政の仕事だ。利用者(住民)は行政に毎月約18ドル払う。
肝心の飲み水だが、飲み水を供給しているのは民間の業者だ。ガザ全体で100以上の業者がいる。
ただし「飲み水」の水道はない。業者が地下水を ろ過 し、給水車で配る。価格は1,000ℓ=12ドル。こちらは塩気がない。なめた限りでは普通の水だった。
日本人が当たり前のように飲んでいるミネラルウォーターはどうだろうか。ガザの場合、ペットボトルに入ったミネラルウォーターはトルコなどからの輸入品だ。
イスラエルが管理するガザ最南端のケレームシャローム検問所を通って入ってくる。街のどこにでもある商店で1・5ℓボトルが1本=30円ほどで売られている。
自らの恥をさらすようだが、筆者は ものの 本を読んでからというもの「ガザの人々は塩辛い水を飲んでいる」ものと思い込んでいた。現地で取材して、そうではないことが分かった。
まさしく「百聞は一見にしかず」である。
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UNICEF(国連児童基金)はガザ地区で「水」と「衛生」の問題に取り組んでいる。