「同じ仕事をしているのに正社員との間で大きな格差があるのは違法だ」-東京メトロの売店で働く非正規労働者たちが、会社を相手取って格差の是正と損害賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論がきょう、東京地裁で開かれた。
原告は東京メトロ売店の販売員で契約社員Bと呼ばれる非正規労働者4人(うち2人は定年解雇)。被告は売店を運営する東京メトロコマース。東京メトロの100%子会社だ。
東京メトロ売店の販売員は全部で114人。うち正社員は19人、契約社員Aは14人、契約社員Bは81人となっている。最も劣悪な労働条件の契約社員Bが大半を占める。
損害賠償の請求総額は4,200万円。「正社員との間の収入の差額」「解雇された2人の退職金」「精神的慰謝料」だ。
契約社員Bは時給1,000円~1,050円で働き、月の手取りは12~14万円だ。正社員とは年収(賞与と月給)で300万円もの格差がある。退職金は1円も出ない。どうやって生きてゆけというのだろうか。
有期契約労働者(非正規社員)と無期契約労働者(正規社員)の間に不合理な労働条件の格差をつけてはならないとする「労働契約法第20条」違反だ。この裁判を貫く法理である。
原告たちは意見陳述をした。4人とも売店のユニフォーム姿だ。丸の内線・茗荷谷駅の売店に勤務する後呂良子さんは手を震わせながら訴えた―
「病気で休めば当然、無給になります。そんな私たちがお金もかかり時間もかかる裁判で、雇用主であるメトロコマースを訴える事は、苦渋の決断でした」
「今、安倍政権は成長戦略として労働法の規制緩和を推し進め、成立させようとしています。今、歯止めをかけなければどんなに差別され、どんなに酷い労働条件になっても、労働者は声を上げる事も、裁判で闘うことも出来ない社会になってしまいます」。
被告のメトロコマース側は代理人さえも裁判に出席していなかった(書面提出により代替されるため、裁判規則違反ではないが)。原告たちは「会社がこれまで自分らを軽視してきたことの表れだ」として悔しさをにじませた。
今や非正規労働者は全労働者の約4割を占める。彼女たちの裁判は2,000万人を超える非正規労働者の劣悪な待遇を問う裁判でもある。
《文・田中龍作 / 武藤凪》