慢性渋滞に悩むウクライナの首都キエフ。だがある方角に向かう特定の道路だけはハイウェーのようにまっすぐでスイスイと車が走る。
「ドイツのアウトバーンのようだろ。ヤヌコビッチが作った道だ」。タクシー運転手は吐き捨てるように話した。道の行く先はヤヌコビッチ前大統領の邸宅だ。前大統領の行き帰りは警察が道路を閉鎖し、彼を乗せた車と護衛の車両だけが走ったという。
20分も走るとヨーロッパの城のような御殿に行き着く。豪奢を極めた邸宅の中味は日本のマスコミも紹介しているので、ここでは割愛する。
特筆すべきはヤヌコビッチ氏が大統領就任中の4年間に国家財政(年間)を上回る金品を懐に入れたことだ。
ウクライナの国家予算は推定で1千億フリブナル(100億ドル)。これに対してヤヌコビッチ前大統領が国家から掠め取った金品は1200億フリブナル(120億ドル)だ。
ウクライナの国家予算をめぐる本当の数字は明らかにされない。明らかにすると国家が破たんしていることが白日の下にさらされるからだ。
ウクライナは国家財政の半分にあたる500億フリブナル(50億ドル)が閣僚など政治家への「お手当て」に消える。問題はこの構図が、新政権になっても変わらないことだ。
農業を除けばさしたる産業もなく、チェルノブイリ原発事故処理の負債に苦しむ。ウクライナがそれでも何とか持ちこたえていたのはロシアの経済協力があったからだ。ロシアとの関係悪化で今後はそれもなくなる。国内政治は腐敗を極める。
「ウクライナは破たんしている」。ある大学准教授は指摘する。「アメリカもEUもいずれ手を引く」。彼は続けた。
ウクライナへの援助は東電にカネを注ぎ込むのと似ている。ウクライナを東電状態にしてしまったのは米国とEUだ。
お人好しの日本はいつまで「米国の財布」を続けるのだろうか。