秋の臨時国会を強行採決で乗り切った安倍政権が、「国民切り捨て」を本格化させた。昨日、厚労省が労働者派遣法を大改悪する方針を固め、きょうは政府が「特定秘密保護法」を公布した。
師走の寒風が吹き付ける永田町に朝から「特定秘密保護法、廃止」のシュプレヒコールが響いた。夜は別の市民団体が抗議の声をあげた。朝が首相官邸前で、夜は衆院会館前だ。筆者は「夜の部」を覗いた。
「嵐はこれから」のプラカードを持っているのは、都内在住の画家(女性・50代)だ。彼女は国民の知る権利を奪う「秘密保護法」の抗議に参加する際、毎回オリジナルのプラカードを作って来る。
「もっとたくさんの芸術家が参加すべき。表現の自由に関わることだから」。彼女は少し残念そうに語った。それでも「反逆はこれから。今後は署名運動に力を入れてゆく」と気持ちを切り替えていた。
彼女と一緒に議員事務所を回り、「法案に反対するよう」陳情した女性(50代)も今夜の抗議集会に加わっていた。
「これからは街の人にアピールすることも大事。法案に反対した議員をこちらの運動に取りこんでいきたい」。女性は前向きだった。
国会議事堂と霞ヶ関を挟んで反対側の日比谷野音でも、安倍政権の標的にされた人々の集会が開かれていた。「労働法制の規制緩和と貧困問題を考える市民大集会」だ。
「世界一、企業が活動しやすい国にする」を掲げる安倍政権の下、労働法制の緩和が進んでいる。最たるものは「労働者派遣法の改悪」である。「同一業務3年」とされてきた派遣の期間が、改正(改悪)後は人を変えさえすれば無期限になる。
派遣労働者Aさんが3年未満勤めた後は、Bさんが同じく3年未満勤め、次はCさん、Dさん、Eさんとすればよいのである。雇止めが無限連鎖するのである。
「派遣が急拡大する恐れがある。史上最悪の改悪だ」。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は言い切る。
派遣が拡大すれば正規社員の職場も危うくなる。日比谷野音には非正規以上に正規労働者の姿が目立った。
都バスの運転手(正規・30代)は事態を憂慮していた―
「仕事をちらつかされれば給料が安くても派遣労働者は来る。(賃金水準は下がり)我々は生活の基盤が崩れる」。
派遣法の改悪は、派遣労働者を半永久的に劣悪な労働条件の下で働かせることになると同時に、正規労働者の職を奪うことになるのだ。
「99%」が霞ヶ関と国会を挟み撃ちする格好なのだが、安倍政権のもと「1%」はビクともしない。