平成の治安維持法を強行採決につぐ強行採決で成立させた安倍政権。衆院で「特定秘密保護法案」を審議した与党の筆頭理事、中谷元・元防衛相がきょう日本外国特派員協会で記者会見した。
秘密保護法に反対する声明を出している特派員協会で、中谷筆頭理事は質問をはぐらかす回答に終始した。
記者会見の冒頭あいさつで中谷氏は、「特定秘密保護法は12項目の修正を経て安心できる内容になった」と胸を張った。
修正項目のひとつに「特定秘密の指定は行政機関が有識者会議の意見を聴いて…」とある。有識者会議はお身内だ。国民の懸念が強い「行政の長による恣意的な運用」を避けることにはならない。
民主党や日本維新の会が強く要望していた「第3者によるチェック機関」は、さらに中味がない。内閣官房に「保全監視委員会」を、内閣府に「独立公文書管理監」「情報保全監察室」を設置するのだという。内閣の外に「情報保全諮問会議」を置くが、これがお身内による有識者会議なのである。
内閣に置く3機関はいずれも官僚が運営する。行政による恣意がさらに強化され、もっと厚いベールに覆われるだけだ。
ドイツ人記者が早速突っ込んだ―
「設置される3つの監視機関は官僚が管理している。ドイツでは秘密の管理は国会がコントロールしている。官僚が秘密をチェックするのは間違いではないか?」
中谷筆頭理事は次のように答えた―
「政治家のリーダーシップにはこれまで何も法律がなかった。官邸の中にオール省庁の監視委員会を作り、大臣が影響を受けるわけです。内閣府にも監察室を設けるので、政治家のリーダーシップの強化ができる」…???ドイツ人記者は[国会に設けるべきでは?]と質問しているのである。
暴走としかいいようのない猛スピード審議で成立させた「特定秘密保護法」を、自民党の石破幹事長、公明党の山口代表をはじめとする与党幹部は「議論を尽くした」と口々に言った。これについて筆者は次のように質問した―
「議論を尽くしたというのなら福島の公聴会で7人の陳述人全員が“ 反対あるいは慎重に ”と意見を述べたのに、なぜ翌日、衆院の特別委員会で強行採決したのか? 大宮の公聴会は前日の夕方決めて翌日開催した。さらにその翌日、可決成立させてしまった。誰が見ても暴走ではないか?」。
中谷筆頭理事の回答は次のようなものだった―
「福島で公聴会を開くと決めたのは私。浪江町の馬場町長をあえて指名した。SPEEDIの公開が遅れたことに懸念を示しているが、本来SPEEDIは公開する情報。原発関連は警備を除いて特定秘密指定されない。強行採決については、国民の皆さんには拙速に見えたかも知れないが、中身的には4党合意に基づく補完を行ったと思う」。
人権侵害の恐れさえある「秘密保護法案」の採決を、なぜあれほどまでに急いだのか? 筆者は理由を質問しているのに中谷筆頭理事はそれには答えなかった。
秘密保護法でもうひとつ人権侵害の懸念があると指摘されるのが「適性検査」だ。筆者は廊下でぶら下がって質問した―
「適性検査について国民の個人情報保護、プライバシーの権利はどう担保されるか?適性検査を行うのはどこか?警察か?」
「各省庁に任されている」と中谷筆頭理事。
「それでは国として適性検査を行う基準があいまい。統一見解がなければ。国が取得した情報の保護はどうなるのか?」
中谷氏は「もれることのないよう適正に管理する」と答えるだけで具体策の言及はなかった。
与党の責任者がこのありさまである。何ひとつ明快に答えきれない。ズサンなままの法律が、国民の知る権利を制限してゆくことになるだろう。