軍事クーデターによって大統領の座を追われたモルシ氏を支持するムスリム同胞団が金曜礼拝のある今夜(日本時間)、大規模なデモを呼びかけている。暫定政権は軍に自衛のための実弾発砲を指示しており、流血の惨事が危惧される。
金曜礼拝で思い出すのが2011年1月28日だ。ムバラク大統領(当時)の辞任を求める民衆が蜂起して初の金曜礼拝だった。カイロのタハリール広場には約10万人の市民が集まっていた。アラーへの祈りが最高潮に達しようとした時に治安部隊の銃口が火を噴いたのである。数十人が犠牲となった。
ムスリム同胞団は食糧、医療など生活の隅々まで人々の面倒を見ており、国民の7割が何らかの形で関わっていると言われる。民衆からの支持は厚い。
2011年、後にアラブの春と呼ばれた市民革命の際、タハリール広場に配置されていた戦車がエンジンをかけた。戦車周辺にいた男性たちはキャタピラの下に身を置いた。「恐くないか?」と筆者が聞くと、「恐くない、自由のために死ぬ」と答えた。
広場にいた別の男性は「軍は国民すべてを殺さない限りデモを鎮圧できない」と話した。イスラムの教えによる殉教精神がある限りその通りとなるだろう。
15、16日の2日間、治安部隊とモルシ支持派との衝突で620人以上が死亡している。
今夜(日本時間)のデモが「殉教の行進」とならないことを祈ってやまない。
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読者の皆さま。残念ですが本稿は日本で執筆しています。